占領が続くガザ地区に暮らす子どもたちの心のケア(Psychosocial Care Program)は、ガザ地区ラファ市の国境付近にある2校から全120名の子どもたちが参加しており、ファシリテーターたちと毎日充実したワークショップが展開されています。
活動説明書と参加申込用紙を真剣に読む
現地スタッフのアーベッドが話してくれました。
今年2月の活動開始当初は、毎日の業務が忙しくて昼も夜も無いようで本当に大変でした。加えてワークショップの内容や取り組みなども分からないことが多くて、自分たちで模索しながらプログラムを実施するしかなかった時期もあって、たくさんの迷いもあったと言います。またワークショップ90分間(学校授業2回分)の活動を飽きずに取り組めるよう、工夫や組み立ても徐々に進化してきました。“空腹”の生理的欲求から活動を欠席してしまう児童が多くて実施が危ぶまれた時期も、毎回の活動終了時に“チョコパン”を提供するようにして対応しました。学校の先生たちとも連携して連絡や情報共有をして周辺環境も整備しながら、やっと児童たちも安定参加となりました。
それから2ヶ月を越えて現在、スタッフたちも少しずついろいろなことが分かるようになってきて活動全体も前進してきました。ファシリテーション能力も向上し、時にはプログラムで感動すら覚える展開を見せることもあります。日々スタッフたちの挑戦が続いています。
そして、子どもたちにも変化が見えてきました。自分の気持ちを出せるようになることやいろいろな表現力が上がること、辛い出来事や悲しみ、恐怖が刻まれた体験も反芻するように整理が進み、やがて消化していく効果等はもちろんですが、こんな男子の場合もありました。
彼は中学生。学校では何かと反抗的で先生の言うことを聞かず、活動当初はあまり参加したがらず塞いでいたのですが、プログラムに継続して取り組む中で、徐々に自分から表現するようになってきて、今では自分の作品を「出来たから見てよ!」と積極的にアピールするまで変化したことを、ファシリテーターたちは把握しています。相乗して学校側から、校内での生活態度や先生との関係も良くなったとうれしい報告を受けています。こうして目に見えづらいことも大切な変化のひとつ。決して“楽しい活動”だけではないのです。
“ガザは大きな牢獄だ”と地元の人は言います。
長く続く占領下での空爆や砲撃、経済封鎖、更に2013年にエジプトでのクーデターや政変の影響も顕著です。ガザ地区の失業率は39%(2013年下半期現在)、経済的な困窮、ガソリン不足、物価の高騰、住宅被害から生活環境の変化、肉親の死別、家庭内暴力(DV)、両親の離婚、家族の崩壊など。やはり家族や家庭の在り方も問われています。その中で苦しむ子どもたち。
そんな環境に暮らす子どもにとって、この場所が自由に表現できて受け止めてもらえて、こころ穏やかなる場所であれ。互いに信頼し合い、心を動かしながら進んでもらいたいと思う。心理ケアの目的だけではなく、子どもたちの青少年活動や情緒教育的な側面も、彼らの成長には重要だと感じます。
現場ではスタッフ3人・ボランティアさん1人・手話通訳の先生たち2~3人・記録撮影に1人。毎回、8人程の大人たちが子どもたち(1クラス5~20人程)に関わることが出来ているという充実した体制。だからこそ関わる大人たちの自己満足ではなく、こうした変化を一緒に喜びながら“子どもにとってどうなのか!?”を大切にして、これからも歩んでくれたらと願います。
お伝えしてきましたガザ現場報告もバトンタッチとなります。
4月初旬からガザ地区という現場で生活して、あっという間の1ヶ月間でした。ですが毎日がぎゅっと詰まっていたので、随分と長く暮らしていたような印象です。覚悟を持ってガザ地区に入域して、この場所の暮らしを味わい、この街のことを知り、たくさんの人と出逢い、子どもたちの心に触れて、スタッフと共に笑い、学びながら関わって参りました。
私がお伝えすることが出来たのはほんの一部ですが、次回6月には桑山さん、8月には優子ちゃんが入ります。
引き続き「パレスチナ・ガザ地区、子どもたちへの心理社会的ケア」応援をよろしくお願いします。
「非日常の中での日常。それでも歩む人生、輝け生命!」
ガザ地区・ラファ事務所 宗貞 研
ガザの事が とてもよく解り
胸に迫りました。
中学生の反抗的だった男の子の変化
それはきっと
小さい事なんかじゃなくて
彼の人生の中で 重大な変化になって行くのですね。
受け止めてあげる温かい場を作ってあげる事で
子供たちが 変わって行くって凄く素敵な事だと思いました。
ワークショップを通して子供たちがどれだけ自覚と自信を持った若者に成長するか~現在の環境に立ち向かえる若者になる事を祈ります。