岩手県一関市に室根西小学校があります。
その校長先生が以前NHKのニュースで、桑山が書いた脚本「星に昇った少年~閖上のおばけ」を被災した子どもたちが演じているという報道に触れて、その演劇を何とかご自身の学校で演じられないものかと、問いかけて下さいました。
うちの優子ちゃんが窓口になり、桑山のシナリオを送って計画が始まって行きました。
僕の脚本は小学校5年生がフルで演じるには長いので、校長先生はシナリオを書き直し、室根西小学校の5年生のみんなに合ったものを書き下ろしました。しかし5年生のみんなはそれを演じながら涙を流し、もっとこうした方が良い、ここのセリフはこう変えようとどんどん意見が出てシナリオはとても素晴らしいものに変わっていきました。
そしていよいよ10月19日、発表の日が来ました。
僕は名取からその演劇を見に行きました。
室根西小学校は全校生徒数が100人弱の小さめの学校です。その全校生徒が最初に合唱をする姿を見た時、大川小学校を思いました。この目の前にいる生徒たちのほとんどが亡くなってしまう。それを想像しただけで深い哀しみと絶望に、動けなくなってしまいました。それが現実に起きてしまったのです。だからこそ、目の前にいる「生きている子どもたち」に、「命を大切に」「生きていられることの幸せを感じてほしい」と願わざるを得ませんでした。
いよいよ5年生の演劇「海~きずな」が始まりました。
最初は自衛隊の捜索のシーンでした。このシーンは僕のシナリオにはありません。ちゃんと「室根西小学校版」になっているのです。もうこの時点から涙が止めどなくあふれてきました。
おばけになって子どもたちの前に現れる海斗君は、実は子どもたちの友だちでした。僕のシナリオでは隣の学区の行方不明の少年なのですが、ここは上手く変更されていて、とってもなじみやすいものになっていて、またびっくりしました。校長先生や担任の先生の想像力が光っています。
海斗君の津波にのまれた時の記憶を取り戻させるために、愛ちゃんと梓ちゃんが「あの日」のことを語るシーンでも涙が止めどなくあふれてきて、ファインダーが曇ってしまいました。
そしてついに海斗君が記憶を取り戻すシーンでは、涙が嗚咽に変わって、止められなくなってしまいました。
しかしこれは、哀しい涙ではありませんでした。「ありがとう、ありがとう」という想いで一杯になる、そんな涙でした。それは、
「こんなふうにきちんと演じてくれてありがとう」
「真剣にセリフを暗記してくれてありがとう」
「つらいことに向き合う勇気を与えてくれてありがとう」
という気持ち。
やはり、子どもたちが真剣に演じている姿を見ることは心にストレートに届きます。子どもたちが持っている素直さ、まっすぐさ、健気さが大人を感動させる。それを身をもって体験しました。
やはり、子どもたちと一緒に津波に向き合うことが大切だと確信しました。
終わって5年生のみんなと交流しました。
「セリフ、難しくなかった?」
「大丈夫!」
「演じててどうだった?」
「こっちが感動した!」
「名取に行きたい?」
「絶対行きたい!名取で演じたい!」
この室根西小学校の取り組みは、学校現場がきちんと意識を持っていれば、こんなに素晴らしい「いのちの教育」ができるということを教えてくれたものです。
この演劇を見た子どもたちはもう人に向かって、
「死ね!」
なんて言いません。是非このシナリオ台本を多くの小学校が使って、「向き合う教育」「いのちの教育」に役立ててほしいと思いました。
細川校長先生、5年生のみんな、担任の先生、本当にありがとうございました。
桑山紀彦
「星に昇った少年~閖上のおばけ」がほかの小学校で演じられたんですね!感激です!
命の大切さを伝える演劇が全国に広がって行きそうですね。
室根西小、大川小と続けていい話を聞きました。
穢れのない子供の心と、勇気と活力に感動しています。
そして、地球のステージの活動がじわじわと浸透していることをうれしく思います。
先日は、ご多用のところ遠路おいでいただきありがとうございました。学校、学級からのお便りで「星に昇った少年」に学び創作劇として「海 きずな」を演じると紹介がありましたが、わが子にはどんな内容なのか内緒にされ、当日あの場で初めて目に、耳にしました。涙が自然とあふれてきました。内容はもちろんのこと、演じた子供たちの成長ぶりに・・・。きっと演じるまでにいろんなことを想い、感じたことと思います。この劇を演じたこと、桑山先生が来校され、子供たちにお話いただいたことは、きっと彼らの励みとなって今後の人生の糧となってくれることでしょう。大変感謝しております。ありがとうございました。