今年度、スカイルーム屋外活動で「共に歩み復興の一助へ」をテーマに定期開催している震災復興イベントの数々。
作日27日は、まるで行楽日和のような暖かく穏やかな晴天の空の下、第6回震災復興「閖上ウォークラリー」からのスピンオフ企画である第6回震災復興「下増田北釜ウォークラリー」を開催しました。
宮城県名取市の被災地といえば「閖上(ゆりあげ)地区」が世間的には広く認識されておりますが、地球のステージ事務局・東北国際クリニックがある「下増田(しもますだ)地区」や東北の玄関口である仙台空港が隣接している「北釜(きたがま)地区も当然ながら壮絶な被災地区なのです。そんな地元に「人生の土台」がある児童たちご家族など総勢14名が、子どもたち全員で「しゅっぱ~つ!」に大人が「おぉ~!」かけ声でスタートし、秋薫るこの町を歩きました。
2つの地区はあまりにも広大であるため、地元住民の日常生活での移動手段は専ら自動車で、子どもたち(一部の児童)は小学校へもヘルメット装着で自転車通学なのですから!改めて「歩くこと」が貴重な体験にならないはずはありません。
「ここにあるのは知っていたけど、それ以外は全く知らなかったなぁ。そんな意味があったんですね~」
「あの赤い観音堂の傍には遊具があって遊び場でした。私の小さい頃の夏休みのラジオ体操はこの場所でした」
「地元に暮らして何年も経つけど、実はこの道、初めて歩いたかも!」
「ここも1m以上の津波が来て1階がグチャグチャだったけど、ボランティアさんに手伝ってもらって綺麗にしたんです」
「この田んぼもそのまま、除染作業が終わったら来年は作付け出来るかな…」
「俺たちの時代は松林でキノコを採って、それを売って野球の道具やサッカーボールを買ったんだ」
などなど地元ならでは関心や新たな発見、まるで未知との遭遇の驚きを共有しながら人生の語りと想い出話は尽きません。
日頃は見過ごしている土地の景色を違う角度から眺め、歴史を重ね残る古墳跡や神社などの文化遺産を再認識し、震災以後に時間とともに変わりゆく田畑の姿にあの日の話を紡ぎ出し、いつもはビュンッと通り過ぎてしまう道端の小さな印にも目を向けていきます。
スカイルームPSWSメンバーで名取市立下増田小学校に在籍している児童たちは、下増田地区から北釜地区までビニールハウス栽培や田畑などの農地が半分以上を占める広大な土地の学区で点在するように生活していましたが、震災による被災以降、応急仮設住宅での生活、自宅を修理して生活を立て直し、現在も同じ場所で暮らしているなど被災体験も生活背景も様々です。その参加者皆様の会話の促進剤にもなり好評だったのがスタッフお手製の「下増田北釜クイズ~PSWS特別版」。
歩き疲れて飽きてしまう子どもたちも楽しく取り組めて学習にもなるよう工夫したのですが、その1問をご紹介します。
第1問【増田川の橋】
Q.下増田小学校のすぐそばに架かる橋の名前は何でしょうか?
A.柚の木(ゆのき)橋
解説.柚の木橋の由来
その昔、ここに暮らしていた「ゆのき」という家から「とうみなみ」という家にお婿さんがきた折、 両方の家の間に増田川があって、婿さんの行列にどうやって川を渡らせようかと考えた結果、なんと「ゆのき」の家が自費自前で橋を架けて婿さんを渡らせたそうです。 それ以来、この橋を「ゆのき橋」と呼ぶようになりました。
いまの下増田小学校の敷地は元々「ゆのきの家」の田んぼで、小学校を作るときに寄付した場所です。そのため現在の下増田小学校の校章は「ゆのき」家の家紋と同じであるそうです。むかしの豪農の財力をしのばせる話でした。
地元っ子なら誰でも知っている答えですので当然「正解」ですが解説が見事!
その土地にある歴史や伝統など、実際に歩いているときに確認出来る現物を用いることでフィールドアクティビティの取り組みにもなる下増田北釜クイズ。支援活動で着任している立場でありながら既にどっぷり名取市民であるスタッフが地元のことを調べて創った愛と想像力の結晶は、出題を通してそこに暮らす人々への「わからないけど…わかりたい」寄り添う想いを伝えるメッセージのようでした。感嘆の言葉に加えて以外にも地元の人間も知らなかった知識が入った皆様は…何で知っているの!勉強になるわぁ!と感心していただきました。
なるほど!の時間や会話をしながらダノン提供のミネラルウォーターとヨーグルトを栄養に歩を進め、間近で離発着が眺められる仙台空港りんくう公園でゴザを敷いてみんなでお弁当を食べ、6歳の1年生から地元の生き字引のようなベテランの方々まで、ゴールに向かって欠けることなく一緒になって3時間50分の長時間を歩き切り、恒例となった「記憶のマッピング作品」を制作……そんな盛り沢山で過した豊かな時間こそが、徐々にスタッフも参加者も一緒の仲間になって共に歩んでいくために、何より大切な宝物なのです。
名取市の震災復興整備計画によると、今月にそれまで暮らしていた下増田地区の一部と北釜地区全体は「災害危険区域」に指定されました。今後、複数年計画で名取市内陸の田畑で土地区画整理がはじまり、そこには公営復興住宅が建設されて新たなコミュニティが創られる予定です。
あの日の震災によって奪われ、2年目の変わりゆく時間と被災後の生活の中でも、ウォークラリーというかたちで「変わらないもの=自分が生きてきた証」を再認識出来たならば、それはアイデンティティの確信となり、被災地のその後の激動の変化の中にあっても流されない、崩れない「自分」を支えることに繋がると信じています。
宗貞 研
公益社団法人 日本国際民間協力会NICCO(ニッコー)
記憶のマッピング。歩く。話す。いいなぁ。
スタッフの皆さんの熱い思いがこの企画を支えていることに感謝します。
自転車や車ではなくてみんなで語りながら「歩く」ことって大切だなと思います。
いろんな理由で町は変わってくけれど、町の記憶が残れば思いはつながっていきますね。
根気と知力と体力のいる復興イベントご苦労様です。
参加した人たちにはこうした、時・折々のつながりが間違いなく励みになることでしょう。
震災復興整備計画と言えば、迫慶一郎氏が提唱する東北スカイビレッジプロジェクトの壮大な「盛り土ブロック再建案」は、佐々木市長も興味を示されていると聞き及びますが、今後実現化に向けて進捗するのでしょうか?興味あります。
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