7ヶ月目の危機

これまで心の危機にはいくつかの山場がありました。

 最初3週間~1ヶ月目の山場。これは大人の皆さんが落ち込んだ最初の山場でした。それに遅れる形で2ヶ月~3ヶ月目に子どもたちの心の危機がやってきました。イライラしたり言葉がやたら荒くなったりと、大変な時期でした。

 それを乗り越えて半年が過ぎ、何となく気持ちにも余裕が出てきたと思われたこの時期、一つの山場が来ています。それは、被災直後から休めず、ずっと働き続けてきた被災者の皆さんがいよいよ限界を迎えていることです。

 職種柄、どうしても休めず、ずっと働いてきた人たち。

「自分は休めない」

 ということでずっと踏ん張り続けてきた人たち。そんな皆さんが今危機を迎えています。そしてもう一つ。働くお父さん世代も危機を迎えようとしています。

 お父さん世代はどんなに被災していても、どんなに心の傷を負っていても、弱音が吐けずずっとこらえているお父さん世代が今危機的状態にあるように思います。

 僕たちは閖上のお母さんたちと共に手芸教室を始めてもう5週間が過ぎました。

10/21-1


 参加するお母さんたちは確実に増えてきてくださっており、そこでいろんな会話が成り立っています。先日はGoogleのストリートビューの写真を見てもらうと、いろんな話しが出てきます。それは非常に前向きであり、そうやって失ったものを心の中に確認し、乗り越えて先へ進んでいこうとする現れのように思えます。

 しかし、お父さんたちにこういった場所がなかなか提供できないことが問題なのです。まず「手芸」という手法が使いにくいこと。あくまで日々働いているのでなかなか時間が取れないこと。そしてそういった集団で集まって、何かを分かち合うという習慣が乏しいことがネックになっています。

 だからお父さんたちの限界がとても恐ろしいのです。

 それでも一生懸命働くことで紛らわせて来られたと思います。働くお父さん世代は「働く」ことで被災のストレスから身を守ってきた傾向があります。しかしそれにも限界があるのです。その限界が今来ようとしています。

 どうするといいのでしょうか。

 僕が思うに、

1)週に1回のお休み(土曜日や日曜日)をちゃんと取るようにする。休みのない仕事を続けることがないようにすること。

2)3泊4日くらいの休みを取って、短い旅などをして気持ちのOn-Offをつけ、休養を取ること

 をより一層意識していく必要があるように思います。

 これはもちろん、働く世代のお父さんだけでなく、被災直後からやむなく働き続けている皆さんにも共通のことです。

 「休みなんて取れない」

 といわないで、ここは一つ「中休み」だと思って休んでほしいですね。山登りだって、良い中休みがあって、始めて順調に頂上を目指せますから。

 本当は休みたかったのに、本当は泣いたり叫んだりしたかったのに、それができないで必死に働き続けてきた人たち。家を失い、家族を失っても、それをずっとこらえて働き続けてきた人たちに、今ちゃんとした休息を。

 それを積極的に取ってもらえるような社会の風潮が今、必要だと思います。

桑山紀彦

7ヶ月目の危機」への10件のフィードバック

  1. 確かに、地域全体が復興に邁進する中、「休息を」とは云いにくい雰囲気が有るでしょうね。
    高度成長で猪突猛進した時代は、がむしゃらに長時間働くのが美徳とされ、制度としてはあっても休暇が非常に取りづらい時代がありました。
    でも、地域全体が復興は長期戦で、“ゆとり”は不可欠です。
    「休む」を普通に云える風潮作りはなんとかならないものでしょうか?  (例えば、復興委員会の様な場に問題提起するとか・・・)

  2. お父さんという立場から、働くだけでなく、家族の前で泣いちゃいけないとか、自分に規制をかけて来た方はおおいのではないでしょうか。
    一度でも、心にあるものをはきださないと、どんどん重くなってしまいますよね。
    そんな場所が、お父さんたちにあると良いですよね。

  3. 本当に まだまだ大変ですね。
    以前TVで見たのですが、お父さん世代の人が介護(妻や親)に疲れても 話す相手もいなくて困っていた。
    そんな時同じ悩みを持つお父さんが コーヒー飲みませんか?と 自宅を解放。
    そこへ 人図てに集まり出した。同じような悩みをはき出し、すっきりして帰る。
    囲碁をしたり、将棋をしたり、ただお茶を飲みに来る人。
    居場所作りですよね。女の人より男の人の方が 居場所作りは ちょっと 下手かな? こんなこと書いて ごめんなさい。
    そんな所が出来れば 素敵ですね。

  4. 桑山先生お疲れ様です!毎日、毎日お忙しく大変だと思います。久しぶりにコメントをしようと思いました!それは今日のブログの内容を読んでいて私は震災後主人の気持ちを理解していたつもりだったのですが、全然主人の気持ちを理解出来ていなかった事に気づいてしまいました。確かに主人は建設業なので、震災後はほとんどお休みを取る事が出来ない日々が続いています。震災後、主人が泣いた姿を見たのは、2回だけでした。1回目は、主人の親族の安否を心配していて、なんとか無事だった事が分かった時、2回目は、中々私達夫婦の気持ちが落ち着くのに時間がかかり、震災後しばらくたってから、気持ちの整理がついて、ゆりあげに行けたのですが、主人は泣き崩れてしまいました。生まれ育った町、沢山の知り合いの方々の死、思い出、全てが奪われてしまい絶望や悲しみの涙でした。けれども、職業柄余りお休みが取る事が出来ない状況の中、仕事で紛らわせていたのかもしれません。ほとんど感情を表す事は無く、現実逃避をしているかのように、テレビを観て笑っていたり、疲れ果てて、夕飯の後はすぐに寝てしまう毎日です。もしかしたら、主人は感情を表す事はせず、押し込めているのかもしれません。先生のブログを読んでいて、気づかされました。なるべくはお休みを取る事を進めたり、たまには気晴らしをさせてあげたいと思いました。先生ありがとうございます!先生もお身体をお大事になさって下さい!

  5. どんなに強いお父さんでも、きっと心の中にはつらい思いと責任感の葛藤が日々繰り返されていると思います。
    そんなお父さんたちが思いを全部吐き出せる場ができて、被災された全ての方々が悲しみを乗り越えて、前に進んで行けることを願っています。

  6.  休みって重要です。もっとも、ボクなんかは毎日休んでいるようなもんで、まったくなんというグウタラか呆れてしまうが。これを、怠け者、非生産的人間、働くことを忘れたアホウドリというのだと思うが、働きづめのおとうさんたちは、休養こそ明日への活力、明日への復興になると思うのですが、でも、日本人ってなかなか休めない国民なんですね。
     一昨年、柄にもなく初めての海外旅行で、家族で行ったときのことです。行き先はフィリピンのセブ島。南の島でノンビリ過ごそうとしました。アジアンリゾートの一つとしても有名なセブ島は、訪れてみると我々日本人だけでなくて、国際色豊かなリゾート地でした。富裕層らしき中国人やインド人。それからヨーロッパやアメリカからの白人たちと世界各国から訪れていたのです。日本人はあわただしく、中国人もセカセカと休日を楽しんでいるように見えました。ところが、白人たちはいかにも優雅にアジアンリゾートを過ごしているではないですか。
     そこでボクは留学経験のある子どもに尋ねました。
     「白人って、リゾートが似合うね。いかにも優雅に過ごしているから」
     「そりゃあそうだよ、おとうさん。もともとバカンスをリゾートで過ごすというのは、ヨーロッパの白人達が考え出したものだよ。あの人たちにとってリゾートは文化なんだ。私たち日本人が畳にきちんと正座して座れるように、リゾートも生活の一部ななっている。たまの休みに、あわててリゾートに行くようなもんじゃあないのさ」
     「そうなんだ。なるほど、歴史に裏付けされた文化の一つなんだね。そういうもんか」「日本人ののリゾートは真似事にすぎない」
     真似事でも、やっぱり休むときは休みましょうよ。働き出すとどうも止められない性分が日本人にはあるようだ。
     もっと休んでください。被災地の「おとうさん」たち。お願いします。
     和歌山  なかお

  7. 私のすぐ近くにも、“休めないお父さん”がいます。
    良くも悪くも「自分がやらなきゃ」という責任感があるので
    「休んじゃえば」というのはとても難しいです。
    実際、休んでも自分の仕事がたまるだけ・・・
    というのが実情のようです。
    そんなお父さんの息抜きは“お酒を飲みながら、語り合う”こと。これが明日への活力になるらしいです。
    お酒は度を超すとかえって体を壊してしまうので心配な面もありますが、
    男性をおびきだす(言葉が悪いですね、ごめんなさい)には、
    『ビールで軽くいっぱいやりながら、語り合いましょう』
    も有効な手ではないでしょうか。
    女性の手芸教室のように、
    男性にも、仕事が終わった時間から、ビールの1・2本と簡単なおつまみで
    飲めない人も一緒に話を楽しめるような
    男同士の会話の場を提供してあげるというのは、いかがでしょう。
    お酒の深みにはまらない程度に提供するというのが、
    課題かもしれませんが。

  8. お父さんたちの頑張り、そろそろ限界なのですね。心配です。
    ちょっと立ち寄れるところがあるといいのかもしれませんね。
    カラオケとかもどうかしら。歌うって発散できますよね。
    男は男同士といったら失礼かしら。お互いに悩みを話せるといいですね。

  9. 先々月、とある研修会に同行していた友人(40代後半の男性)とイベントについて話をしていたところ・・「ロボコンとか、男としては童心に返って楽しめるイベントがあるといいのにな~、日頃のストレスが発散できるのに~」と、しみじみ言っていたことを思い出しました。
    童心に返って遊べる!!私の場合「泥団子作り大会」がいいかな~

  10. 桑山さんも、その中のお一人ですよね。
    震災の前からずっと……
    震災後からはもっと……
    本当に、休める時には体だけでも休めて頂きたいと、いつも気になっております。
    コメントが遅くなりましたが、それだけお伝えしたくて記させて頂きました。
    ではまた、あした。

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