心理社会的ケアの始まり

 今日は閖上小学校、閖上中学校の先生たちと勉強会をしました。

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 采配してくださったのは、名取市教育委員会学校教育課課長の瀧澤先生です。瀧澤先生は「地球のステージ」のファンで、もう3回も小学校で呼んでくださってきました。そのうちの2回がなんと避難所になっている館腰小学校なのです。こうやってまた「地球のステージ」の人脈に支えられて大切な活動ができています。瀧澤先生がいらっしゃらなかったら、こんなに早い段階で学校現場には入れなかったと思います。
 今日はまず閖上小学校、閖上中学校の先生方との勉強会という形で心理社会的ケアが始まったわけですが、閖上小学校は1名が亡くなり、閖上中学校は11人が亡くなり、3人が未だ行方不明です。一つの中学校で14人がいなくなったという事実をどう受け止めて行くのか、大きな課題です。
 今日の勉強会では、まず震災後人間の心がどう揺れ動くかをお話しし、子どもと大人の違いについて触れました。子どもはまだまだ心と体が分離しておらず、ごちゃごちゃになっているという点、そして言葉による表出がまだまだ十分でないために心の傷が外へ向かって表現されにくく、それにより重荷を抱えてしまいかねないことをお話ししました。そして、その回復や予防において、「心理社会的ワークショップ」が有効であることと、これから1年かけてゆっくりと、しかし確実にそのケアを行って行きたいところ。できれば、最終的には演劇を完成させて、日本中に発信していこうと提案しました。
 閖上の子どもたちはきっと今、
「なんで俺たちだけがこんな目にあってんだ」
 と思っています。でも、そんな思いも、みんなで一緒に津波のことを演劇にし、それを自ら仲間と共に表現していく中で、
「これは津波のおかげでこんなに強くなれた」
 という心の発展まで持って行きたい。それがこの「心理社会的ワークショップ」なのだとお話しさせていただきました。
 多くの先生が泣いていらっしゃいました。先生たちも心に多くの傷を負っていらっしゃる。
「自分の生徒を守れなかった」
「有効な一声がかけられなかった」
 といって悔やんでいらっしゃる先生たちがそこにいました。
「自分のせいだ」
  「自分はもっとやれたはずなのに、生徒を死なせてしまった」
 そんな思いが先生たちの心を締め付けています。でも、僕は言いたい。
「先生も精一杯やりました。やれるだけのことはやりました。今はひたすら“これから何ができるか”を考えて行きましょう」
 それでも、先生は悔やんでいらっしゃいます。なんて正直でまっすぐな先生方。
 だから僕は先生たちの心のケアも同時に行って行きたい。生徒たちと一緒に絵を描き、粘土を創り、音楽やスポーツに触れ、そして演劇を創っていく。そんな共同作業の中に先生も入っていただいて、生徒さんたちと同じように「吐き出し」「物語を紡ぎ」「形にして」「葬っていく」そんな心の作業を一緒にしていきたいと思うのです。
 名取市教育委員会は、そんな僕をメンバーの一員と認めてくださり、このワークショップがどうやったら有効に生徒さんたちに伝わっていくか検討が始まりました。
 これから僕たちが海外で行ってきた心理社会的ワークショップがこの名取の地で完璧に近くできるかもしれない。心が震えます。
 そして閖上小学校で1作品、閖上中学校で1作品の合計2作品の「演劇」を創り上げていきたいと思っています。テーマはもちろん「津波」です。それは来年の3月10日(土)に、できればホールを借りて行いたいと、密かに考えています。それはおそらく全国でもまれにみる、
「被害にあった学校の子どもたちが、まさにその被害をテーマに生きる再生を目指す演劇を全国に向かって発信する」
 そんな日になります。
 この手厚い心のケアのために、物資を運ぶ車両(おそらくハイエース)、画材や粘土、大道具、小道具、そして桑山が不在の時にしっかりと指導できる複数のスタッフを雇用します。それはまさに総合的に行われる系統だった「心のケア」の始まり。
「僕たちは確かに被害に遭った。仲間も家も街も失った。けれど僕たちは代わりに得たものがある。それは無償の気持ち、人のつながり、努力、愛。目に見えず形はないかもしれないけど、大切なもの。それをこの演劇に込めてみんなで創り上げる」
 その時が、本当の閖上の子どもたちの心の復活の日と信じて、3月10日を目指します。
 そんな僕が留守のクリニックを支えてくださっているのが、鹿児島から来ている田中先生。今日はみんなであり合わせの食材でご飯をつくり、みんなで食べました。
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明ちゃんと優子ちゃんも料理!
 合宿所みたいになっているけど、こうやってみんなができることを今行っています。
 そんな名取に今日は雪が降りました。
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気温は2度。なんでこんな時に雪が・・・。避難所は今日は凍えています。
桑山紀彦

心理社会的ケアの始まり」への14件のフィードバック

  1. やはり心の中に抱えた傷は・・・心のケアは、どんな形であれ抱えたものを外に表出・表現することが大切なんですね!子供たちによる演劇の実現の日には是非拝見したいです。明子さん、優子さんもお元気そうでなによりです。まだ、雪が降るんですね。また、避難所のインフルエンザが心配です。東北の皆さんに、本格的な春の訪れを切に願っています。

  2. わ~い、明ちゃんと優子ちゃんだ~♪
    そろそろお二人の写真を所望しようと思っていたところでした♪以心伝心?
    笑顔がチャーミング♪お料理も美味しそうですね。
    閖上地区の子どもたちのケアが授業の中に組み込まれて行われるんですね!画期的!
    先生も一緒にケアできるのがいいですね。余り急がずゆっくり進めてくださいね。

  3. 私は、子供達の心は勿論、関わっていらっしゃる先生方が心配でした。先生方も涙を流し前進出来ます様に祈っています。
    3/10は、桑山さんのこれまでの活動の経験を生かせますように。みんなが心身ともに元気になります様に。 応援しています。何か出来る事があれば声かけて下さい。(ないか。)

  4. 人前でないたのは、津波以来初めてでした。
    「溢れ出る涙は拭わない」それが私の信条です。
    感情はむき出しで良い。それでも、今日まで「かんぬき」をかけて
    走ってきました。
    私のかんぬきをはずしてくださった桑山先生、ありがとうございます。
    津波祈念館も、色々アタリつけてみます。
    私の教員人生は、やっと始まった気がします。
    本日お越しいただいたこと、心より感謝しています。
    感謝は、行動で表したいです。
    体使ってなんぼの商売ですから!

  5. 「目に見えず、形はないかもしれないけど、大切なもの」…
    「星の王子さま」に出てくるキツネと王子さまの話を思い出しました。
     ・・・・・
    「じゃ、さよなら」と、王子さまはいいました。
    「さよなら」と、キツネがいいました。
    「さっきの秘密をいおうかね。なに、なんでもないことだよ。心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。
     かんじんなことは目に見えないんだよ」
    「かんじんなことは、目には見えない」と、王子さまは、忘れないようにくりかえしました。
    「あんたが、あんたのバラの花をとてもたいせつに思ってるのはね、その花のために、ひまつぶししたからだよ」
    「ぼくが、ぼくのバラの花を、とてもたいせつに思っているのは…」と、王子さまは忘れないようにいいました。
    「人間っていうものは、このたいせつなことを忘れてるんだよ。だけど、あんたは、このことを忘れちゃいけない。
     めんどうみたあいてには、いつまでも責任があるんだ。まもらなけりゃならないんだよ、バラの花との約束をね…」と
     キツネはいいました。
    「ぼくは、あのバラの花との約束をまもらなくちゃいけない…」と、王子さまは、忘れないようにくりかえしました。
     ・・・・
    子どもたちも、先生たちもすごいことを学んでいくのですね。わたしたちが日ごろ忘れていることを…。
    来年の3月が楽しみです。

  6. こんなにも嬉しいスタートのお知らせを、直ぐに知ることのできるインターネットに感謝。胸が高鳴っています。寝られないかも。
    瀧沢先生ありがとうございます。このカタチこそ、これまで地球のステージに心を動かされてきた人たちが、今、望むことなのでは。
    できれば、勉強会もワークショップも映像で記録し、残してほしいです。
    優子さん&明子さんの笑顔が見られたのも嬉しい!お元気そうで良かったです!
    さて、3月10日は有給休暇申請しなくちゃ(^0^)/

  7. なんとしても完成させてください。
    地球のステージのミッションが具現化する。
    そしてNPO法人地球のステージが大きく飛躍する。
    そんなうれしい夢を見ています。

  8. 「吐き出し」「物語を紡ぎ」「形にして」「葬っていく」
    これ、読んで「うわ~っ!!」って思いました。
    私が今までやってきたこと、これだったんだ、って。
    具体的には、少人数で集まって、語り合いながら、布を縫って、ガンの子どもが描いた絵をキルトにしていったんですが。そのキルトは、去年、広島、長崎やアメリカ各地で見ていただきました。ガンの子どもと出会って、その子の闘病と死に寄り添って、その子が遺した絵を、始めは泣きながら一人で縫っていました。
    あの子のことを、1周忌にあわせて、物語に紡いで、暗誦で人に聞いてもらって・・・それを何回かしているうちに、あんなに苦しくて苦しくて仕方なかったあの子の「死」が、す~っと、楽になっていたんです。
    あの子が遺してくれた絵を縫うこと、それは私なりの祈りの形でしたが、そこにしがみつかなくなった、というのか。
    縫うことや、暗誦で語ることは、集団の「演劇」とは形が違いますが、本質的には同じことを、私はこの5年間、続けてきたのかもしれません。
    仙台の友人たちとは、語り合いながら鶴を折って、それで七夕飾りを作り、8月に飾ったあと、お盆の迎え火で焚くことを考え中です。
    これも、形を変えて、おなじことをしようとしているのかなぁ、と思いました。

  9. 桑山先生、瀧沢先生ありがとうございます。
    子供のケアも大人のケアもとても必要な事だと思います。
    学校関係者でなければお邪魔できませんので、こうして情報教えていただくことは貴重でありがたいです。
    自分でコントロールできない気持ちを抱えて、苦しさを我慢している被災者は多いと思います。
    時間の流れを待つだけでなく、どうすれば立ち上がれるかヒントが欲しいと思っていました。

  10. ずーっと 精神科医をされてきて 海外支援をされてきて そして 地球のステージで 伝えられ 今 名取で 支援。
    それには 桑山さんに賛同した人たちが・・その人たちに 支えられて 今の桑山さんがいる。(もちろん桑山さんが素晴らしい人だから)
    人間って 素晴らしいと 教えられた。
    子どもたちのおなたちの こころが和らぎますように!心底笑える日が きますように! 先生たちも自分を責めないで いっぱい泣いてください。
    桑山さん よろしくお願いします。
    明ちゃん優子ちゃんの笑顔が 素敵です。
    みんな ファイト!

  11.  2時46分といえば、学校では授業中です。そのとき、生徒に適切な指示ができなかったのでは、そのせいで生徒が亡くなってしまったのではと思うのは教師として当然だと思います。先生方のこころの傷も大きいと思います。
     そんな先生方のケアーのため桑山先生の社会的心理ケアーの試みは素晴らしいと思います。どうか先生方を助けて上げてください。
     
     それから、あきちゃん、ゆうこちゃんも毎日御苦労さまです。大変だと思いますが、体に気をつけて被災した人々のために頑張ってください。久しぶりに笑顔の写真が見れて、こちらも嬉しくなります。
     そんな、お二人に、銀色夏生の詩を送ります。
         「時々」
     
     時々君を見かける
     
     そのたびに僕は
     
     この世界も
     
     まんざらではないと
     
     思ってしまうのだ
     
      和歌山 中尾より
     

  12. 授業時間内に組み込まれた演劇ワークショップ!
    本当にワクワクする!
    ぜひ、その様子、記録しておいてください!
    近くだったら見に行きたい!

  13. なんと言えばいいか…
    なんて素晴らしい試みなんでしょうか。
    本当に、総合学習や道徳より大切で素晴らしい授業になると思います。
    陰ながら応援させてください。
    そして、何か必要があればここで『発信』してください。
    それまで、ブログを読みながら私にできる事を、私なりに手探りでやっていきたいと思います。

  14. 久留米市母と女性教職員の会の長谷川の娘です。高3です。
    何度もコメントをしようとしたのですが、言葉が出てこず、コメントできずに終わっていました。
    私には想像もつかない過酷な経験をして心にも体にも傷をおった方たちを思うと涙が出てきます。自分になにができるか、考えたときに被災地へでむくということは専門知識も何もない私にはまだすべきではないことのように思います。
    この震災を忘れない
    いまもこの瞬間もたたかっているみなさんを想う
    ちいなさことをずっとずっと続けていきたいと思います。
    行く時がくれば必ず行きたいと思います。
    桑山さん、みなさんふぁいとです!!!!!

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