ガザ入域:裏話その2

エジプト軍が求める誓約書

 「私は、日本国籍のパスポートを有する日本人です。今エジプト政府の許可を得て、この国境を通りガザに入ろうとしているものです。ガザは、現在とても危険な状況にあります。しかしながら、そこでどんなことが起きようとも、その責任をエジプト政府やエジプト軍に帰することはしません。いかなることでもすべては自分の責任であることを明言します」
裏話2
誓約書を書く桑山(撮影:後藤明子)
 そう手書きで2枚書くとめげます。
 何があっても、誰のせいにもできないことはわかっているのですが、さすがにあからさまにそれを書かされることで、自分が見放されたような気持ちになったものです。
 自分はとんでもないことをしようとしているんだ、と言う思いに重なって、自分の意志でイラクに入っていったものの、拉致されてしまい結果として非難を受けたしまった人たちのことが頭をよぎりました。
 でも一方で、アフガニスタン、ペシャワール会のスタッフで亡くなられた伊藤さんのことも頭をよぎりました。
 あの違いは何だったのか。
 長年の活動を続ける中で亡くなってしまった伊藤さんは、ペシャワール会という本当に息の長い、地元に根ざした活動をされていました。そんな姿勢が評価され、日本中が伊藤さんを悼む様子に触れた時、自分たちが、どれほどこの「ガザ」あるいは「ラファ」というところに根ざしてきたのか考えるいいきっかけになりました。
 そして年月こそ6年ではありますが、少なくとも現地のダルウイーッシュが、
 「来るなら受け入れるぞ」
 と言ってくれていることを頼りに、この切ない誓約書をエジプト軍に提出したものです。
桑山紀彦

ガザ入域:裏話その2」への4件のフィードバック

  1. 見放された気持ち・・・・
          ~自己責任・・・・・
    このたびのガザ入りは、ほんとうに驚いたものでした。まさか・・・でしたから。
    日本で見守っている以上に、大きな負担がかかっての入域だったことが、あらためてよくわかりました。(無事に帰ってくることができて・・・よかった)
    瞬時に決断してのことで、ほんとうに最高のお仕事をされましたね。(akiカメラマン、周りへの気遣いをされての行動を讃えます。ほんとうにお疲れ様!帰ってきてくれてありがとう!)
    海外で活動をされた方々・・・多くの日本人の方々のことが思い出されました。そして、一生懸命にやれるだけのことをやってきたらいいんだ!そう思って、念じていたものでした。多くの祈りが届いたのでしょうね。
    まだまだ時間がかかるかもしれませんが、少しずつ日常を取り戻していってください。

  2. ガザ入域1と2を読んで、私も、あの頃を思い出していました。「エレズが開いていない。」と聞いて、ホッとしていました。「ダルウィーシュ、レターを書いてくれ」「よし、わかった」この時は、何て余計なことを・・・!と、正直思いました。エジプト側に回って、入ろうとしても、国境警備兵が、入れてくれない。よしよし!このまま時間よ、過ぎてくれ。そうすれば、21日からステージが始まるし、映画もあるから、帰国してくれる・・・。と、ガザに入れない事を、祈っていました。
    もちろん、入域を迷っている様子は、ブログからも読み取れましたし、桑山さんが日本の皆の心も分かっているのは、十分感じていました。
    ただ、当時のブログには、akiちゃんの様子が出てなくて(なぜそうしたかは分かりますが)このブログに、akiちゃんの様子が出ていて、今でこそ二人が無事だから言えますが、目の前に着弾という、今まで味わった事のない恐怖で、どれだけ辛い思いをしたのかと思うと、涙が出ます。
    帰国した夜、成田で迎えたとき、二人の笑顔がこわばっていたのは忘れられません。

  3. まず・・映画「ありがとうの物語」大盛況だったとの事で良かったです。
    おめでとうございます。
    ガザ入りに誓約書なんてものが必要なんですね。考えてみればそれはそうなのかも知れないですね・・。
    自己責任・・それは誰よりも先生が一番解っていたはずと思います。
    でも自分自身が半信半疑で迷いや恐怖があっている最中、「行け」と言われたわけですから、それは辛かったと思います。
    こんな紙切れのような薄っぺらいものじゃない!ぶつけようのない反発したい気持ちがあったのではないかと想像します。
    自分自身に問いかけ 正しいのか???
    その時の心境。当人でなければわかるはずないですよね。誰もが経験する事ではないですから。
    十人十色でいろんな考えがありますが、それが良かったか悪かったかなんて判断出来ないと思いますし、それこそ次元が違う気がします。
    命の危険と隣り合わせだったわけですから 愛 優しさ 以外考えられません。
    先生やあきさん 地球のステージは愛されるべきと思っていますから、私はその優しさ 愛を守ります。
    人間は皆、弱くて誰もがゆがんでいて完璧な人なんていませんよね。
    それを愛や社会によって修正され成長して行くんですよね。
    信じる勇気・・。愛がなければ生まれません。
    本当に切なかったですね。

  4. 何て切ない誓約書でしょう!つらくて怖い体験をたくさんなさったのですね。世界地図を開きました。エジプトからガザに入域なさったのですね。桑山さんとあきちゃんがここを通ったのね、とあらためて思いました。ご無事で還っていらして本当に良かったと心から思います。あきちゃんが撮ってくれた桑山さんの写真がブログに載って、家族みんなで見ています。私の子ども達にもしっかり伝わっています。
    Frontline21号のパレスチナ支援事業のところに「力強く情に厚く生きている人々がいます」とあきちゃんの記事がありました。今までのブログも読み返しました。
    世界中のどの子も大人たちから大切にされてほしい、守られてほしいです。世界中の心も身体も傷ついた人々がどうか癒されてほしい。世界が平和になってほしいです。
    1日に映画を観ました。桑山さんもあきちゃんもいました。少し痩せたかな、と思いました。あきちゃんに声をかけました、ホントはぎゅっーとハグしたかったです。素敵な映画でした。佐藤監督、映画事務局のみなさまに感謝します。
    寒い時期です、お風邪ひいてませんか?お体に大切になさって下さいね。

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