「閖上の記憶」の未来

昨日は「閖上の記憶」のミーティングでした。

宮城県補助金が突然落とされ、復興庁の補助金も「これは本来名取市がやる仕事ではないでしょうか。」という理解不能の理由で落とされて、2週間が過ぎました。

名取市が何もやらないので、代わりに私たちがやり続けているこの「閖上の記憶」。

補助金が全て落ちた今、私たちの財源は募金と物販を売ることで得られるお金のみとなりました。

正規職員としての武田絵莉香、番人さんへの謝金、案内人への謝金などの支払いを行うと現在月に20万円~30万円の赤字となっており、7月末までで概算110万円の赤字となっています。それでも、募金や販売物が売れることで月々50万円~70万円の収益を得ていることが一つの答えを出していると思うのです。

それは、この「閖上の記憶」が「必要とされている」と言うことです。

月々50万円~70万円の募金と販売物が売れているというのは、「ものすごいこと」だと思うのです。それはひとえに「全国から人が来て下さっている」「語り部や案内人が”きて良かった”と思わせている」「物販物のクオリティが高い」と言うこと。現在累計訪問者数は8万6千人。徐々に減ってはきているけれど、年間1万5千人~1万7千人がこの「閖上の記憶」を訪れているのです。開館している日数で割れば平均で1日約100名が来て下さっているということ。

入館料を頂くのではなく、内容が充実していれば人は必ず「応援しよう」と思って下さるということがよくわかってきています。

必要とされているのだから続けたい。それが今回のミーティングの内容でした。

しかし続けていくには工夫が必要です。

支出の抑制、そして収入の増加。それをしっかりと話し合いました。

まずは今年度は慰霊碑の社務所としての活動が重要なので、このままの形で維持しながら、支出の抑制と収入の増加を図っていきます。

そして2018年4月以降は以下の戦略で進めていきます。

①プレハブを「購入」し、恒久設置を目指す。

全国にあふれる良い中古物件のプレハブを買い取り、恒久的に設置します。なぜプレハブかというと、まだまだ被災地は予定がたたないところもあり、いつ移動しなければならないかわからないところがあるのでプレハブという建物を購入しますが、それは「買い取るもの」であり、これで現在の年間のプレハブ賃料(約140万円)がかからなくなります。

もう賃貸ではないので「閖上の記憶」のイメージカラーである、橙色がかった黄色で建物を塗ろうと思います。

②クラウド・ファンディングで300万円を目指して全国の皆様からの支援を受ける

恒久的な「閖上の記憶」の設置を前面に打ち出し、市にも、県にも、国にも頼らず自立運営する被災地発の「津波復興祈念資料館」の設置にご協力下さい!という訴えでお金を集めていこうと思います。

頼れるのは市、県、国ではなく、一人一人の皆さんのお気持ちであるという原点に立ち戻り、市民活動としてこの津波復興祈念資料館の建立を目指します。

③人件費は1.5人

「地球のステージ」として人件費を確保し、まず専従が1人。そしてそれを支える「右腕」のパートタイマー・スタッフが1人。あとの番人の皆さんは基本ボランティアベースで関わっていくというスタンスを確立していきます。

④伝えていくものは「命」「防災」

現在の県や復興庁の思考は「生き残った被災者の皆様のためにお金を使います」というもの。それはそれであっていいかとは思いますが、丹野さんは言います。

「死んでいった者たちのことはもう忘れてしまおうとしている。」

「死んでいった者たちのためにお金を使うという思考が薄れてきている。」

その通りだと思います。

「復興、復興!」という旗振りをして、地元にお店を構えたり、復興住宅での集まりやお茶のみに対する補助金はどんどんついていますが、私たちのように「あの日のことに向き合う」「命を考える」「防災を考える」ものについては全くお金がつかなくなりました。それが今回宮城県が突然補助金を落とし、復興庁が「名取市がやるべき事なのではないですか?」といって補助金を不採用としたことの理由にもつながっていると思います。

そんな「世の中の流れ」に沿っていいのでしょうか。

私たちは思う。

「沿う人がいてもいいし、愚直にもあの日のこと、命のことを伝え続けようとする者がいても良いじゃないか。」

と。

「それでは今の世の中の流れには沿っていないから苦労するよ。補助金はつかないよ。」

という人もいるけれど、私たちは思う。

「流されてはならない。」

と。どんなに世の中が復興だけに向かおうとしても、この世には忘れてならないことがある。それが「命のこと。」「あの日何が起きたのか」を伝えること。

それを伝え続ける希有な「津波復興祈念資料館」があっても良いじゃないか、という思いなのです。

ぜひ皆さん、これからどんどん新しいアイディア、運営方法、恒久設置へ向けた計画を立てていきますので、見守って下さい!

そしていよいよクラウド・ファンディングが始まったとき、何とぞご協力下さい!

皆様のお名前が新生「津波復興祈念資料館~閖上の記憶」の壁に刻まれます。

僕たちは市民活動によって支え合う、そんな関係を目指します。もう補助金などには頼りません。

 

桑山紀彦

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