旅の終わりに

これほどの苦しい旅は、かつてないほどの日々でした。

 全くブログも書けずひたすらアラスカの寒さと雪と闘っていました。

 結果的にはオーロラの4K動画映像は撮影することができました。来年以降の「地球のステージ1」のオーロラは動画になりそうです。

 それでもまず最も辛かったのは、どこからか「アラスカに行く」という情報が駆け巡ったことで、これは公式的に言うしかないという状況となり、それを公にしてしまったことでした。

 特に広報せずアラスカに行き、オーロラの撮影に臨めたらもっと余裕で日々を過ごせたのだと思いますが、よせばいいのに自分でタンカを切ってしまったことでもう逃げ道をなくしてしまったことが最大の苦境だったかも知れません。オーロラはただ晴れるだけではみれません。「晴れていて」+「出てこないと」見られないとてもハードルの高い自然現象です。

 それほどこの12月のアラスカは雪と荒天にさらされており、オーロラをみるのはきわめて難しいという状況の中に飛び込んでいました。

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 夜の21時から翌朝の8時まで11時間、ずっと寝ないでオーロラの出を待ちます。初日は雪がちらつき、時折晴れ間は見えるものの、オーロラはかすかな光をその雲の向こうにちらつかせるだけです。

 眠気が襲ってきたら少し横になりますが、零下20度を下回る環境の中、観察するための山小屋は暖かいですが満足には眠れません。おまけにJALのオーロラ観察ツアーの皆さんが来訪している繁忙期なので、山小屋はもういっぱい。とても静かに横になれるような状況ではなくまんじりともしないで時間が経っていきます。

 しかもこの時期のアラスカは朝の10時くらいに日が昇り、2時過ぎには沈んでいきます。つまり朝の8時でも真っ暗闇なのです。それだけで気が滅入ります。

 2日目、雪は止みどんどん気温が下がり零下30度を超えていきます。しかし空には厚い雲。この2日目を逃すと、あとは3日間は23時までという制限付きの帰国です。2日目の21時過ぎ、山小屋にたどり着きますが、オーロラは見えていません。

 90年のアラスカ、デナリでのオーロラに始まり、94年ノルウェー、トロムソでのオーロラ、2009年イエローナイフでのオーロラと、3回オーロラはみていますが、このような雲の厚さではまず出現しないのが常です。絶望的な気持ちになってきました。

 さらに3日目は午後からこの冬最大という大嵐が来るという情報が飛び込んできました。3日目は飛行機を変えてでも早く脱出しないと先日の新千歳空港のようにフェアバンクス空港が閉鎖になりそうです。フェアバンクスからでられなかったらもう孤立です。絶体絶命。2日目の夜が刻々と過ぎていきます。

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 2時を過ぎてJALツアーの皆さんが帰り、山小屋は10人から6人に減りました。お互いを励まし合いながら空に向かって晴れろ~晴れろ~と念力を送り続けます。そしてほぼあきらめかけていた午前4時過ぎ。急速に空が晴れ、星がまたたき始めました。そして北東の空からゆっくりと立ち上る緑の柱。それはみるみるカーブを描いて空に拡がっていきます。目の前の針葉樹林の上に横一文字のアーチがかかりました。

 オーロラです。

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 天空には渦巻き型のカーテン。見事な出現でした。願えばかなうものです。

 

 しかし、雪雲の名残があり空気に透明感がないためオーロラの光の量が通常の6割くらいでした。今回の導入機材は超高感度カメラ、Sony α7s-II。実にISO=400,000まで上げられるほぼ暗視用カメラです。しかし40万まであげると粒子が一斉に粗く出るので使えません。ゆっくりISOを下げ、ギリギリみられる値としてISO=204,000まで下げ、そこで撮影しました。粒子は粗く、4Kだからなんとかなりますが、本当にギリギリの条件下でのオーロラ撮影でした。

 それでも、星がそのまま写り、オーロラがパラパラ漫画的でなく撮影できたのは実に幸運でした。

 これから粒子の処理と色バランスの調整が必要ですが、なんとか来年以降のステージ1番のオーロラは動画で行けそうです。それを見た子どもたちが大いなる自然への驚きとあこがれを持ち、大人になる中でアラスカや大自然に興味を持ってくれるきっかけになるといいと思います。

 今の写真でさえ小学校中学年までの子どもたちは歓声を上げてくれるのですからきっと、動画になればみんなが歓声を上げてくれるに違いありません。

 

 冬山登山とはこんな感じなのだろうと想像しました。寒さと疲れ、狭い山小屋でまんじりともせず横になり疲れをため込みながら、また次の頂きを目指す。「好きでないとできないなあ」と改めてその困難さに出逢って思いました。その意味においては、確かに自分はオーロラが大好きです。

 しかしフェアバンクスは世界の中でも非常に晴れる日が多いオーロラ観測ポイントだとは思いますが、常連の皆さんが口をそろえて、

「12月は雪が多くて難しいよ」

 と言っていました。見るとしたらオーロラが始まる9月か、最も寒くて晴れやすい2月~3月。ぜひ皆さんも参考にしてください。

 

 さて、深夜1時では絶対猛吹雪で欠航になると踏み、その日の午後2時の便に変えてまずはフェアバンクスを脱出しなければ絶対に帰国できない状況でした。案の定フェアバンクス→アンカレッジ→シアトルと変更したのですが、そのアンカレッジ便が空港の猛吹雪で巽が凍りつき、融雪剤をかける作業で1時間近く立ち往生。それでも圧雪の滑走路をすさまじい吹雪の中、滑走して空に舞い上がっても窓の外は「白」一色。まさしくホワイトアウト。でも無事にアンカレッジに着きました。

 

 この自然の猛威、そして人間の意図通りには決してならないのが自然。改めて自然の前では無力である自分を感じると同時に、であるが故に自然大して畏敬の念を持ち、どのようにその自然の猛威と付き合っていくか、私たち人間の忍耐と知恵が求められていると感じました。

 経った5日間の行程でしたが苦しいが故に学ぶことが多かったオーロラ撮影でした。

旅の終わりに」への1件のフィードバック

  1. 19日に家内が、22日に私がインフルエンザにかかり、何十年ぶりに起きられず、食べられず、やる気が起きない一週間がたち何とか車の運転ができる状態に戻りました。
    アラスカは大変でしたね。
    私はフィンランドのサールセリカに一週間滞在して夜空を見上げて結局見られらなかった経験があります。
    ハラハラドキドキでしたが見られてよかったですね。

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