待っていた耐乏生活

みなさま

　今日はたくさんの「誕生日おめでとう！」メッセージをありがとうございます。歳はとりたくないなあ、と思いながらも祝っていただける幸せを感じながら今パレスチナ自治州ガザ地区ラファ市におります。

　あまりの耐乏生活のひどさに、さっそくレポートをしたいと思います。

　全く電気が来ません。

　これはラファ市中がその状態で現在1日に1回も電気が来ないことも普通になっています。電気が来ても4時間のみの計画配電。昨日午後3時には事務所に入りましたが、現在朝の7時ですけれど、1回も電気は来ていません。

　「地球のステージ」のラファ事務所は蓄電装置があり、電気が来ている時にバッテリーに蓄電し、停電したら最低限度のものが使えるように放電していきます。現時点でそのアンペア数は6.6。このまま電気が来ないとすぐに底をつくことになると思います。

　電気が来ないと次に大変なのは水です。屋上のタンクに水をあげることが出来ないと、断水となってしまいます。既に多くの家庭が断水となってしまっているようで、困窮が身近です。

　続いてガス。これは煮炊きをしたり、場合によっては暖をとる貴重なエネルギー源ですが、こちらもガソリン同様供給不足となっており、実質上配給制となって市民生活を脅かしています。

　さて、現在のラファ市は朝方冷えると8度程度にまで下がります。

　しかし電気なし、ガスなしの生活だと暖を入れるものは全くありません。やむなく重ね着をして毛布を何枚も重ねて寝ましたが、息苦しくかつ身動きが取れないのでぐっすりは眠られませんでした。もちろん時差が7時間あるので、その影響もありますが、まんじりともしない夜でした。それでも国境線からは時折散発的な銃撃の音。まだまだ懲りない人たちがトンネルを掘っているようです。この銃撃戦はハマスサイドとエジプトサイドのものです。

　うちのセキュリティ担当のジアードさんが言いました。

「いつになく厳しい冬だ。資源がほとんど枯渇しかかっている。電力不足は日々ひどくなっているし、そこに追い打ちをかけてガソリンとプロパンガスの供給不足。既に何人かが寒さで亡くなっている。これが封鎖された環境の中で生きているということだ。

　しかし最も深刻なのは大学を出たって働くところが全くない、この失業率9割という環境だろう。そんな社会で育つ子どもたち、青年たちにどんな夢を見ろと言えるだろう。無力感を感じる。努力してもそれが認められない社会では、人々は怒りをためるだけだ。それが次の紛争の火種になる。だからこうしてこの困難なガザ地区の、しかも一番南のラファ市にやってくる日本人に感謝している。どうか、私たちと共にFrontline（「地球のステージ」の現地団体名）が歩んでいってくれることを強く願うよ。」

　まさに津波を受けてからの5日間のような耐乏生活。そして課題が多いこのガザ地区ラファの町。けれどそれでも人々は生きています。今日は子どもたちの発表会。笑いと、感動と、拍手の中にこの最終発表会が終わることを祈りながら、1日の始まりです。

　世界でも最も厳しい環境にあるこのラファの町で自分の誕生日を迎えることが出来たことを感謝しています。「ここから頑張れ！」と言われているのだと自覚して、日々、出来ることを頑張ります。

　みなさまも、この封鎖されて厳しい環境にあるガザの人々に興味と関心を向けてあげていただければと思います。ニュースに出ることは少なくなりましたが、それでも彼らは困難の中に生きています。最大の支援はお金でも電気でもない、「君たちのことを忘れないよ」という気持ちを向けてもらえることだと、アーベッドも力説していました。

　電気よこい～！

桑山紀彦