いよいよ撮影は3日目に入りました。
すごいと思うのは、子どもたち、一切台本を見ません。完全に暗記しているのです。だから現場に台本を持ってきていない。このやる気は何だろう。この力は何だろう。何かに取り組む姿勢において、このパレスチナの子どもたちの集中力は並外れたものがあります。
それはこの厳しい封鎖されたガザ地区という劣悪な環境において、必死に生きていくためにどんなチャンスでも無駄にしない、そんな想いがひしひしと伝わってきます。おそらく家族もみんなそうやって生きてきているのだと思う。そんな家族の姿を見て育った子どもたちは、この長い映画のセリフを全て頭にたたき込んで現場に臨んでいたのでした。
ところが、今日はタクシー運転手、マジディと出逢い、1つめの石を見つけるシーンですが、マジディがセリフを覚えていない。だから、どんどんテイクの数が増えていきます。1シーンに3~5テイク必要となっているのですから、子どもたちから不満が出るのも仕方ありません。もう大人の方がたじたじになるくらいに、子どもたちのやる気は研ぎ澄まされていました。
それでも、こんなにたくさんのクルーに囲まれて、とてもいい感じです。
日本人は3人のみ。あとはみんなこのガザ地区、ラファに生きているパレスチナ人です。みんなが役割を学習しながら、「次はオレたちが映画を撮るんだ」という意気込みでついてきてくれています。
さて、午後からは東の農地に出かけていき、お百姓のヤシーンと出逢うシーンです。
ヤシーンはうちの芸術スタッフですが、歌、踊り、タブラ(太鼓)、演技、全てにおいて素晴らしい才能を持っている人材です。そのヤシーンがお百姓さんに分して、この空爆のひどかった東の地と、大地に生きる意味を子どもたちに伝えます。
しかしこのロケ地はイスラエル国境に近く、危険地帯です。万が一空中を飛ぶ戦闘用ドローンに襲撃されてはなりませんので、大きなバナーをつくり「ここは撮影中」というサインを空に向かって出しました。
それでも、撮影の途中幾度もF-16戦闘機が飛び、近くの国境では空爆の音が響いてきます。
子どもたちと映画を創っている「創造の空間」と、大人たちの争っている「戦争の空間」が互いに接しているところがとても不思議でした。
思った通りのヤシーンの素晴らしい演技にみんなほだされて、
「これはハリウッド進出だな!」
とみんなにいじられていました。
ガザは日の当たりにくい地域かも知れないけれど、こうしてみんなヒーロー、ヒロインになっています。
それを裏方として支えている撮影チームは、大いなる幸せを感じながらこの空間を共にしました。
しかし灼熱と、電気不足から来る住環境の悪さは半端ではなく、容赦なく日々の体力を奪っていきます。
あと数日、頑張って撮らないと!
倒れちゃいられません。
桑山紀彦
物心ともに、生きるための最小限の情報しか得られない環境に置かれた子供たちと、快楽的な情報にあふれた環境に選択を惑わされている子供の差がはっきりと出ているように感じます。
多分、自立する強さは相当違うでしょうね。
あれから…今に至るまでの日々の準備が、すごいですね。
全く違いますが、今日はいろんなことで、もやもやとして…
『仲良しこよしで、自分が嬉しいだけではダメ!安心していられる環境をつくり、自立へ向かう手助けをすることこそ、私達の仕事!』と、語っていました。
日本の小さな小さな出来事の中で、です…
すみませんm(__)m
意味のわからないぼやきで
生命が、いつどうなるかわからない環境の中で、光に向かってひたすら進んでいく人間の強さ、すごい!
ガザの『ふしぎな石』待っています!