今年も3月のステージが続いている。
この時期は卒業のシーズンで、よく「卒業記念」に迎えられることが多い。
親や先生たちの熱い気持ちが、生徒たちに向けられる大切な時期であるが、ステージ的には苦労することがある。
3年生が浮ついているのだ。
そりゃあ受験も終わり、あとは発表の待つのみ、という場合もあるだろう。卒業を目の前にすると、「学校」というしばりから一瞬解放された気持ちになって、浮つくのも仕方あるまい。
しかし1,2年生から見るとなんともみっともない姿に映るだろう。
「せっかく周りがお祝いしようとしているのに、ぶち壊しやなあ」という場合も、時には目にする。
そんな時は、「地球のステージ」の公演中にワークショップが始まるのだ。
名付けて「PP法」=People’s Power法
これは、その一部騒いでいる3年生を取り上げて行うものである。
「今みんなの中学校は戦争状態だ。戦争はいつも一部の心無い人たちが暴力的になることで始まっていく。ほとんど人が、ただ普通に暮らしたいだけなのに、この体育館で言えば、まじめに聞きたいだけなのに、一部の心無い人たちがそれを壊していく。
それが戦争というもので、みんなの体育館は今戦争状態だ。
どうしたら、それを終わらせることができるだろうか、考えてみよう。
まず直接みんなの誰かが、その騒いでいる人たちに、
「おい、静かにしろよ!」
と言う。すると絶対に、
「なんだてめえ、かっこつけんなよ」
と逆ギレされて殴られるのがオチ。これはいい方法ではないようだ。
じゃあ、僕が壇上から、
「そこのおまえたち静かにしろ!」
という。しかしきっと、
「けっ!大人がうるせえよ」
で終わり。これも得策ではないようだ。
国連が、大上段に振りかざして「戦争をやめたまえ」といっても、決して戦争が終わらないこととよく似ている。
そこでみんなに提案だ。
次の曲が終わったら、今までの拍手を「2割り増し」にしてくれ。それが、この暗闇の中で、みんな一人一人が無言のうちに、その心無い者たちに、
「おい、おまえらまじめに聞け!」
というサインだとしよう。
ここは暗闇だから、誰がどの程度拍手を割り増しにしたかは、その人たちにはわからないよ。
このステージをちゃんと聴きたいと思っている人は、思いきって意思表示をしてみてくれ~。
すると、多くの場合は拍手は4割~8割り増しになる。
それをつかまえて、
「な、そこで騒いでいた人たち、君たちの同級生が、そして仲間が”ちゃんと聞け”という意思表示をしたぞ。あとは君たちが、正しいという行いをしてくれ」
と問い掛けると、見事に彼らは静かになる。
その拍手が割り増しとなって聞こえてきた時、多くの先生たちが、
「泣けてきた。自分たちの生徒が、こんな力を持っているとは」
と、おっしゃる。
結構感動のワークショップに変わる。
結局一部の心無く騒ぐものたちは、先生や親といった「大人」の言うことには反発する。ましてや突然やってきた壇上の「大人」である桑山の言うことなんて、
「けっ!」
って感じだろう。
しかし彼らが一番気にするのは、同級生であり、同じ「生徒たち」なのだ。
その隣人たちがきちんと意思表示をすると、彼らはショックを受け、そして静かになる。
それでも静かにはならなかった学校が、ほんの若干ではあるけど存在する。
それはまた別の対応が必要だと思うが、やはり中学生は難しい年齢だけど、何かを待っている存在でもあるのだろう、とよく感じるものだ。
ざわついて、聞けない子どもたちがいる中学校は、最近だからドキドキしながら、このPP法を思いきり使わせてもらっている。
それこそが、ライヴである「地球のステージ」を困難な中学校で公演する、一つの大きな意味だからだ。
自分も、中学生たちに鍛えられて、少しずつ強くなっているように思う。
ドクトルK
やはり、3月の中学校でのステージは受験と卒業式があり、そわそわしがちで桑山さんの語りと歌は子供たちの心にはあまり響かずにいたでしょう。しかし、さすが桑山さん自分が体験した事をしっかりと子供達の心に響かす事ができるなんてすごい!これからは、ステージ5に向けて頑張って下さい。
>しかし彼らが一番気にするのは、同級生であり、同じ「生徒たち」なのだ。
>その隣人たちがきちんと意思表示をすると、彼らはショックを受け、そして静かになる。
ここの文章にグッときました。
確かに「隣人たちがきちんと意思表示をするということ」はとても大切なことで、我々大人がつい見逃してしまいがちな視点だと思います。勉強になりました!!
3月20日、愛媛県八幡浜市在住の笹田良子さんという方から、大学の研究室宛に、清見タンゴール(愛媛特産のみかん)が送られてきた。笹田良子さん?誰?僕は、講演に都道府県をまわることがあるが、愛媛県には松山と今治しかいったことがない。はて、さて、八幡浜とは?中味はみかんなのだが、知らない人から間違って届いていたら、と思うとあけるにあけられない。取り扱いのJA(農協)に連絡を入れると、「愛媛のおばちゃん」からだということ! え、もしかしたら、あの「愛媛のおばちゃん」!? さっそく封を解いて中をあけると、手紙が。そう、桑山さんゆかりの「おばちゃん」なのでした。驚き、サプライズ。1つ、味見をさせていただく。うーん、あまくておいしい。愛媛のおばちゃん、ありがとう!!
ある中学校でのPP法を目の当たりにしました。
事前に入場許可のお願いを校長先生に電話したところ、「うちの学校はいい子ばかりじゃないよ」と念をおされました。田舎の素直で素朴な中学生を見ている私へ、覚悟をして来て下さいよということだったのでしょう。茶髪の子もいないし、服装も乱れていないし、騒がず開演を待っている十中の子どもたちの隣に座って、安心していました。
ところが、ステージがスタートすると、隣に座る下級生が、そわそわ体を動かし始めたり、下を向いて眠る子もいます。画面に見入る子は3分の2です。ほどなくして、前に座る3年生の方から話し声や笑い声までします。正直、びっくりしました。こんな状態の学校を見たことがなかったから。
どうなるのだろうとひやひやしていた時、桑山さんが話し出しました。“ドキドキしながら”とは思えない解りやすく素晴らしいお話です。「今、十中で戦争が起きている… 」「拍手で意思表示してくれ」アカペトの歌の後の拍手は見事に倍増しました!
「十中の底力を見せてもらった!」と励ます桑山さん。見事な采配です。
PP法の通りに、子どもたちが自分たちの問題を自分たちの力で解決できた、その「十中の底力」に私たち大人は感動の涙が溢れます。そして、雨が降ったからこそ地が固まった感動のステージとなりました。
戦争は遠い国のことだけではなくて、平和な日本でも小さな戦いが日々起きている。それを止められるのは、政治家でもなく、市町村の役人でもなく、地域のお偉いさんでもない、1人1人の意思表示。悪いことを悪いと言える勇気と伝え方。しいては、自分自身と戦う優しい力。
このPP法なるものは学校だけでなく、会社だったり、地域にも活用できる方法なのかもしれませんね。平和を築く為にいい方法ですね。