撮影2日目~観光という可能性

今回、初めて島の東に旅をして、改めてこの東ティモールがすばらしい自然と民族の島であることを実感しました。
 首都ディリに、物乞いの子どもたちがいないこと。首都であっても農村的な助け合いがあり、人が非常に優しいことはわかっていましたし、これまで5年にわたって関わってきたエルメラ県の人々の笑顔の美しいこと、誰にでも普通に挨拶をする開いた心のあること、山の自然が美しいこともわかっていました。
 しかし今回東の端のロスパロスを目指す途中で立ち寄ったバウカウ周辺の美しさ一つとっても、これは十分な観光資源になりうると確信しました。
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 今回は世の中にほとんど知られていないベニラレの棚田を訪ねました。
 以前フィリピンやバリ島の棚田には行きましたが、その迫力と美しさ、たたずまいにおいて全く引けを取らないと思いました。しかもこのベニラレには旧日本軍がつくった防空壕がそのまま残っています。そこは表面からのぞいただけでも、ものすごい奥行きであり、その奥に何があるのか、未だわかっていないというくらいの戦跡です。
 加えてこの地域にはワイカナというところに温泉が湧いており、36度という低温ではありますが暖かいこの地域においてはその方が気持ちがいいというもの。整備すれば確実に観光資源になります。
 そしてディリに帰る途中の北海岸線に広がる海と空。
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 思わず浮かんだキャッチコピーが、
「Nothing, but everything~何もないけど、すべてある。」
 これぞ今の東ティモールではないでしょうか。
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 今、JICAの展開する青年海外協力隊の活動の中にも一村一品運動や伝統的な織物のタイスの製品展開という仕事があります。加えて今回平成25年度4次隊の方の中には「観光局で働く」という仕事もあります。
 この国がたくましく強くなるには、いろんな産業を育てなければなりません。その中に観光産業があってもいいと思うのです。
 もちろん行き過ぎた開発がどれだけのものを失うかは、既に多くの国で経験し、その失敗のあまりの大きさは周知のものです。だから、十分な配慮を行った上で進めなければならないのが観光産業であることは間違いありません。
 しかし東ティモールは、これほどの「感動」があるのに、まだほとんどの日本人が観光でこの国を訪れることがないのが実情です。だから、思ったのは日本人が経営するツアー会社を立ち上げて、日本からの観光客をもっと呼び入れていくべきではないかというもの。
 そこには、民泊や漁業体験、農村体験というエコツーリズムはもちろんのこと、国際協力が盛んな国なのですから、こちらで活躍する日本のNGO団体がやっているコーヒーショップに観光のお客さんをお連れしたり、この機会に青年海外協力隊の活動を現場で視察してもらうようなオプションツアーを企画したり…。
 そんな東ティモールならではの観光資源~自然、民族、国際協力という3つをキーワードにしたツアー会社を立ち上げるのです。
 もちろんその会社はディリ市内にのみ拠点を持ち、日本の旅行代理店とは契約ベースで仕事を進めるべきでしょう。つまりディリの空港への出迎えから送迎までを担当する、全くの「現地旅行社」というあり方です。日本の旅行代理店からの依頼を受け、東ティモール国内のみの旅程の構築やツアー内容への責任を担うという点において、非常に限定的なものではありますが、今こそ、そんな時期に来ていると思いました。
 1999年の争乱、2002年の独立、2007年の内乱を経てようやく落ち着いてきた東ティモール。
 青年海外協力隊も既に20人を超え、ディリ在住の日本人も増えてきました。そして昔から活動しているPARSIC(パルシック~昔はPARC:パルクでした)はすばらしいコーヒー農園と契約を持ち、上質のコーヒーを生産しディリ市内にカフェを持っています。
 本部を広島の山中に移動した斬新なPeace Windsも、実に味のいいコーヒーを日本に輸出し、すばらしいフェアトレードを行っています。そのピース・ウインズもこのたびディリ市内にカフェをオープンしました。
 協力隊の人たちがずっと継続している一村一品運動も、その質の向上が目覚ましいです。
 しかし、人が来なければこれらの活動もやがて衰退してしまうでしょう。観光はある意味この東ティモールを元気づけることに重要な要素だと思います。
 特に「国際協力の現場が見られる」という利点を活かしたツアー会社を立ち上げれば、これまでとは違う展開が臨めるのではないか、と思うのです。
 今日、北海岸線をずっとクルマで走りながら、この美しい風景と、「何もないけれど、すべてある」ということの意味を、私たちだけが独り占めしてはならないと思いました。少しでも多くの人たちがこの国のよさに触れて、そこでたくさんお金を使い、雇用も生まれていけば、国も変わるのではないかと思えてきたのです。
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 もちろん観光がすすめば、それにまつわる弊害も増えます。
 水質の汚染などの自然破壊、売買春などの愚かなる動き、貧富の差の拡大とスラム化…。
 それらと対峙しながら進めていくという点において、この日本人初の東ティモール・ツアー会社は国際協力系の人間が行うべきだと思います。
 かつてカンボジアにPITトラベルという小さな会社がありました。
 谷川さんというご夫婦が営んでいらっしゃいましたが、私たちNGOととても仲がよく、職種は非営利と営利という違いがあっても、目指すものは同じだなあと思っていつもつきあっていました。今奥様の方の恵さんはシェムリアプに住まれ、現地のスタディツアーを受け入れる旅行代理店を営んでいらっしゃいます。
 日本の若者を受け入れ、村にある学校と話し合って運動会の主催などを若者たちに手伝ってもらい、国際協力の現場をすなわち「観光」に変えています。
 そんな視点の旅行代理店が、そろそろこのディリに、東ティモールにできるべきだと思いました。
 
 既に「意思」があります。営む「人」も「人脈」もあります。
 ただこの仕事の現地駐在は協力隊のOVか、NGO経験者である必要があると思っています。
 あとはお金だけだなあ。
 どなたか、この新しい仕事に出資されませんか?
 現地駐在をされる方も探し始めなくては…。
 確か島根県で来年退職される教師の方もいたような…。たしか協力隊のOVだったと思うし…。
 14年関わった東ティモールをこれからも保健、医療、国際協力という視点で支えていきます。
 でも一方で「観光」という形の支援もあっていいと思うのです。
 「なにもないけど、すべてある~ Nothing but Everything」
 そんな東ティモールに、来たくなりませんか?
 温泉もあるんですよ!
桑山紀彦

撮影2日目~観光という可能性」への5件のフィードバック

  1. キャッチコピーが浮かぶほど、素敵な景色がひろがっちょったんじゃね!!実現すれば東ティモールも発展しますね。

  2. 壮大な構想。
    ここまで考える国際協力に驚いています。
    さすがです。わくわく感いっぱいです。

  3. 海がとても綺麗なのは知っていましたが、山も綺麗なんですね!
    飛騨にも、世界中を旅してきた旅人が経営する、クールな田舎をプロデュースする企業があります。
    住んでる街でも、旅人目線で旅をすると、また違った発見がありそうです。
    今日は春の高山祭。天気に恵まれ、良い祭になりそうです。

  4. 「なにもないけど、すべてがある」
    桑山さんの興奮と東ティモールへの愛が伝わってきます。
    現地旅行社、是非実現させてほしいです。
    山形県庄内も、マダガスカルも、おのおのの文化や美しい自然がなによりの魅力であり、誇れるべきもの。まさに、東ティモールも。
    でも、伝える手段が必要。
    プロデュース力大事ですよね。今後の展開が楽しみです。

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