僕と直人君

月曜日は下増田の子どもたちとの「スカイルーム」です。

 2人、閖上出身だけど(転校したため)他の小学校に通っている子どもたちが来てくれていますが、それ以外はみんなこの下増田で被災しました。
 どうしても閖上地区のことは全国的に名前が知られるようになりましたが、クリニックや「地球のステージ」のある下増田の被災はなかなかテレビソースには乗りません。
 でも、下増田地区でも空港の横にある北釜地区は壊滅して、今はわざと半壊の自宅を残している地区長の鈴木さんの家を残して真っ平らです。そんな下増田で被災した子どもたちと関わってもう10ヶ月ですね。
 直人君は、そんな中元気な小学4年生です。
 元気すぎて困るときも多いのですが、でも彼の素直さやまっすぐさが感じられて、僕はいつも直人のことが好きです。
 彼自身は考えられないような厳しい被災経験をしているのですが、ちゃんと「スカイルーム」に来てくれています。そして今日は「未来の街づくりのジオラマ」の最終日でした。今日仕上げて、リンリン、ケンケンが名取のイオンモールに運び込まなければなりません。直人君は、
「どうしても自分の家をつくりたい」
 というので、もう粘土制作は終わっているけどその強い意志に応えようと家造りをはじめました。まず土台が出来て、その上に長い「塔」が立っています。
「これはね、7階建て」
「すごいね、なんで?」
「津波が来ても大丈夫なように・・・。」
 ちゃんと防災が出来ています。
 そしてそのてっぺんには「H」のマークが。
「これは?」
「ヘリポート」
「すごいね、家にヘリポートが着いたよ!」
「でも、いざ津波が来たらこの家全体が飛び上がれるんだ。」
5-1.jpg
 直人君は津波に飲み込まれながらも九死に一生を得た少年です。大切な肉親も失いました。でも今はこうして「住みたい家」をつくり、そこに「防災」の強い意識を盛り込んでくれています。
「さて、どこに置く?」
「海から離れたところ。」
 そういって下増田小学校、増田川の堤防の淵にその家を置きました。
5-2.jpg
 お母さんやお父さんに見てほしい、彼の「未来」です。
 これですべてのジオラマが完成しました。明日からはフル出演のジオラマ制作群が名取のイオンモール(名取エアリ)で見ることができます。
 ぜひ、おいで下さい!
 さて、今日も中盤、小学2年生のののかさんが突っ込んできました。
「ねえ、ドクトル。国際クリニックは儲かっていますか?」
「そうだね、最近はようやく黒字になってきたよ。」
「そうなんだ~。」
「でもね、はじめたときは大変だったよ。だってね、1日7人しか患者さんが来なかったときもあったんだよ。」
「へ~。」
「もう食べていけなくて、大変だったけど、今は大丈夫。」
「でもドクトル、病院が儲かるってことはよくないことなんじゃないの?だって、患者さんが増えるってことは世の中的にはよくないことなんだよ。」
「そ、そうだね・・・。」
「だからドクトル、病院は儲からない方がいいんだよ。」
「ハイ、わかりました・・・。」
 こんな小学校2年生との会話ってすごくないですか?機知と正義、そして愛に富んだこの下増田の子どもたちが、僕は大好きなのです。
桑山紀彦

僕と直人君」への5件のフィードバック

  1. 直人君の作った赤い塔は、未来を目指す強い意志の表現ですね。きっと彼らの手で素敵な明日が創造・デザインされていくでしょう!青と赤のコントラストがきれいです。

  2. 子供の言うことって意表を突かれますね。
    大人の作った社会常識~汚れない純粋な気持ちには勝てませんね。
    この純粋さを保ったまま大きくなってほしいものです。

  3.         「河北新報のいちばん長い日」ドラマ化
     
     仙台に本社を置く河北新報が、あの震災の最中、どのようにして新聞を出し続けたのか、そのドキュメントを綴った「河北新報のいちばん長い日」(文芸春秋刊)がドラマ化されました。
     3月4日(日)テレビ東京で午後8時から放送されたのですが、もしお見逃しされた方がおられましたら、3月11日(日)午後9時よりBSジャパンで再放送がありますのでぜひご覧になっていただけたらと思います。
     原作とは違う面でいいドラマになっていると思います。
     新聞も救助、支援になるのだということが伝わってくるドラマなのです。
     電気もなく、電話も通じない中、避難所には情報がまったくなかった。
     「新聞がなによりの救援物資だ」。
     河北新報が必死で記事を集め、やっとの思いで刷り上がった号外を避難所で配ると、奪い合うようにして読んだ避難民のこの言葉が胸に突き刺ささります。
    迫真のドラマといっていいと思います。(実際の津波の映像も流れます)。
     ただ、河北新報の記者を演じた小池栄子が、なにか違和感があったのがちょっと残念です(ミスキャストかも?)。竹内結子あたりであったならなら嵌まっていたようにも思えるのですが。
     それは脇に置くとしても、観て損のないドラマであるということはできます。東日本大震災の別の断面(被災した新聞社)を知ることができるに違いありません。
     被災地以外にお住まいの方は是非にと思うのですが。(地デジではなく、BS限定なのが辛いところ。東北放送では3月10日(土)午後一時から放送があります)。
        和歌山  なかお

  4. 直人君の気持ちを受け止めて、今日完成したジオラマ。
    見るのを楽しみにしています。
    子どもの素直な気持ちを頭から否定しないことが大事なのかもしれませんね。
    果てしない可能性を秘めた子どもたちにのびのびと育ってほしいなと思います。

  5. 桑山 紀彦 様
    「病院は儲からない方がいいんだよ」という小学2 年生のことばには大変びっくりしました。
    実際そのような現実の中で多くの大人は迷っています。
    経済は発展するほど難しくなっていく。
    しかし将来有望な子どもが増えていくようですね。
    これから楽しみです。

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