それぞれの日曜日

 彼岸の時期が終わりました。

 今日は法要があったので、お坊様のお話を聞きました。
 此岸と彼岸の間に三途の川があり、四十九日までは此岸(こちらの世界)におられ、この日を境に彼岸に旅立たれると言います。しかし、生前の行いにより、地獄なのか天国なのかが分かれますが基本的に人間は食べ物を食べて生きていく、つまり他の生きものの命を頂いて生き長らえるという点において、既に罪深き生き物。だから、通常は地獄へ落ちるはずですがそこに親戚縁者、友人が集まって、法要でお祈りを一身に捧げると、
「よしわかった」
 とばかりに、みんな天国へ行けるといいます。だから四十九日にはみんなで集まってお祈りをし、故人を偲ぶべきなのだと。
 とてもよくわかる話でした。そうしてなくなった後の故人のことを辿りながら、ちゃんと意識としてその人が存在することを認めていくことが宗教の大切なところだと思います。人は死を恐れますが、確実に誰にも死が訪れます。
「人は死んだらどうなるのか」
 それは人類が抱えてきた永遠の謎ではありますが、そこにいろんな考えを持ってきて、人が納得しやすい考えを編みだしてくれているのが宗教の大切な存在意義の一つだと思います。
 此岸と彼岸の位置関係も、とても納得の出来るものであり、先日の北釜のお母さんが教えてくれたように、
「亡くなった人は修行が終わったから旅立てるんだよ。」
 という考えもとてもすっと胸に収まってきます。
 とはいえ、突然家族を津波で奪われた人の気持ちが簡単に癒えるわけはなく、北釜のお母さんの言葉にも、
「私はこの心の傷を一生背負っておくことになるでしょう。そして自分が死ぬ時その心の傷の重荷から解放されると思うんです。」
 心に刻むべき言葉だと思いました。
 今日の朝日新聞にいわき小名浜漁港の漁師さんの話が載っていました。
「ようやくあがったカツオ。いわきじゃあキロ350円で売れたのに、築地の市場じゃ100円だった。“やっぱりな”って感じでがっかりだ。“福島であがったってだけで、東京じゃ売れない”」
 他にもカツオを入荷する選択肢のある東京の市場は既に福島を切り捨てているんではないでしょうか。こんな時こそ放射能が未検出であるという大見出しつけて持ち込んだこのカツオにご祝儀値段でもつけるのが、「助け合い」「お互いさま」なのではないでしょうか。
 風評被害を食い止めるのは一人一人の意識です。
 築地の卸商の意識を変えさせるのも、東京の消費者一人一人の意識だと思います。
 そんな日曜日でした。
追記
 山形の高校で、演劇部の顧問をされている鈴木優子さん、ぜひ詳しくお話をしたいので、ステージ事務局に連絡を下さい。
022-738-9220です。
 お待ちしております。
桑山紀彦

それぞれの日曜日」への15件のフィードバック

  1. 母が亡くなった時、四十九日の法要までは気がはっていたけど、その後何故かホッとして涙脆くなった事を思い出しました。私も、お話を聞いてみたかったです。
    魚市場のお話は、ガッカリです。漁師さんの気持ちを考えると何とも言えません。

  2. 海堂尊監修「東日本大震災、医師たちの奮闘 救命」より抜粋 (その3)
    岩手県大槌町
    植田医院
    植田俊郎医師
     午後二時四十六分に地震が来ました、今までに経験したことのない大きさでした。だけど、私は特別にあわてなかった。自然の猛威の前では、人間なんて何も出来ないって諦観めいたものがあるからなあ。揺れはじめたときは患者さんの血圧を測っていましてね。「長いね。いつもと違うね」なんて、普段の口調とあまりかわらなかった。
     それでも患者さんの身の安全は大事です。地震が収まった時点で来院されていたみなさんの無事を確認し、ひとまず自宅へ帰ってもらいました。
     私も医院と家を見て回った。医院のほうはカルテ棚をはじめ、医療器具も倒れたり壊れたりはしてなかったから、ひと安心です。むしろ住居の食器棚や本棚がヒックリ返って、床一面がひどい有り様でしたね。そっちの始末に、うんと時間がかかるって感じだった。
     そんなことよりーーーーあれは地震発生から十分後くらいだったかな。若い女の人が「道端におばあちゃんが倒れている」って駆け込んできたんですよ。さっそく往診カバンをつかんで彼女のクルマに飛び乗り、行き倒れの老婆のところへ連れて行ってもらいました。場所は水門のすぐ近くの須賀町というところ。私を追いかける形で看護師さんも来てくれたけど、歩いてもほんの数分のという距離でした。
     幸いにも、このおばあちゃんは重篤な状態じゃなかった。地震のせいで動転したんでしょう。
     意識はしっかりしていて、ケガもころんだときにちょっとすりむいた程度でした。クルマの女性に老婆を避難場所まで送ってもらうようお願いしました。
     このとき、確かにサイレンが鳴ったと思うんだ。津波警報の放送じゃなくてサイレン。同時に、あれは水門を閉めるためだったんだろうな、消防車もサイレン鳴らして走ってきました。
     これをきっかけとして、にわかに町中が騒然となってきました。たくさんの人たちが高台めがけ避難をはじめたわけです。トコトコ歩いているのは私と看護師さんくらいのもんだった。道すがら、近所の人たちが玄関先に出て不安そうにしているんで、私は「津波が繰るかも知れないし、早く逃げたほうがいいよ」なんて忠告したりして。でも避難しろっていっている本人に、さほど危機感がないんだから説得力がない。
     病院に着いたら、ちょうど女房がデジカメで壁を撮っていたんです。「ヒビが入ってる」なんていいながら。私は「その程度なら大丈夫だよ」と答えました。でも、このすぐ直後です、妻がJR線の踏切のほうを指差して「白いものが見える」っていったのは。
     じゃあ、とりあえずは家に入って高いところへ上がっておこうってことになった。(中略)
     私はそのまま往診カバンとAEDを持って階段を昇りました。往診カバンの中には血圧計とか聴診器、注射器のセット、応急的な医薬品なんかが入っています。私も医者の端くれなんだもん。何はなくてもこれだけは持ちました。
     四階の窓から外を覗いたのが私の見た最初の津波です。というか、波や水は見えずに、町全体が真っ白にもやっていました。急いで妻がデジカメのシャッターを押した時刻が午後三時二十二分、後で知ったんだけど、一帯が白くなっていたのは、大津波が町を呑み尽くし家屋をなぎ倒した土煙だったんです。
     屋上に出たら、眼下には早くも濁流が押し寄せていました。この時点で、ウチはもう三階部分まで水没していたね。近所の二階建ての歯科医院や三階建てのアパートは建物が見えません。茶色をした濁流の遠くにかろうじて水門が確認できるくらい。それから私は四階に降りて一眼レフカメラを取ってきました。山岳が趣味で、いつも山登りの際に持っていっているカメラです。これから起こるであろう非常事態を逐一、記録しておこうという気持ちがありました。
     地震があって急患を往診して、呑気に歩いて帰ってくるまで三十分ほどの間の出来事なんだけど、これが一分でも二分でも後にずれていたら、間違いなく私は津波に流されていた。クルマで逃げて行った人でも、山手の中腹くらいで渋滞して動けなくなり、そのまま流された例が少なくないそうです。生死の分かれ目って、本当に微妙なところなんです。
        (その四)へ続く
        和歌山 なかお 

  3. 風評被害くやしいです。
    風評を流す人、それを信じる人、無責任な野次馬のようで気色悪いです。
    惑わされずに、真実を知る努力と意識は強く持っていたいと思います。

  4. 名取住みのいわき小名浜出身のものです。
    この連休で、震災後はじめて帰省し友人等にもあってきました。
    実際いわきに住んでる人が、福島産は口にしないと言っていたりするのが
    現実でした。小さい子供がいると特に。ネットが発達し色々な情報が
    入ってくる分判断が難しくなってくる一面もあると思います。

  5. 屋外で農作業されてる方はかなりの被曝量だと思うんですが、「風評被害に負けるな」の声に逆らえず避難も出来ないんでしょうね。
    被曝に関しては農業の作業環境は最悪です。
    「農民は黙って被曝しろ」が日本人の暖かい声なんでしょうね・・・。

  6. 桑山紀彦 様
    今回の内容に胸がすう~とされる想いです。
    私もご指摘のお言葉を心に留めておきます。
    風評被害を食い止めるのは一人ひとりの意識
     ・・・・本当にその通りでございます。

  7. 「暑さ寒さも彼岸まで」昔の人は偉かったです。
    彼岸を境に急に秋らしくなったのは、今年も去年も同じでした。
    心の一区切りを付けるには、季節の変わり目がありがたく思います。
    放射能汚染の風評被害は、政府の発表する内容が信頼出来ていない事から起こっています。
    セシウムだけの数値を発表していますが、ストロンチウムやプルトニウムは何故数値化しないのか、基準値内と言うより”0.000”と数値を言えないのか、それらが不安を増長させています。
    「直ちに影響はない」事故発生以来何度も聞いたこの言葉の意味を今は理解しています。
    「東日本大震災、医師たちの奮闘 救命」この本の内容を毎回アップしている人がいますが、著作者の承諾を受けているのでしょうか?
    桑山さんが人々の写真や内容を「許可を頂いて掲載させて頂きました。」と自分のブログ内に書かれているのは、色々な問題を理解しているからと思います。
    ご注意ください。

  8.        著作権について
    「東日本大震災、医師たちの奮闘 救命」について著作権侵害ではないかとのお問い合わせがあったのでお答えします。
     新潮社に問い合わせてところ、個人的なものであれば、特に問題はないという答えをいただいております。出版したり放送で使ったりしない限り大丈夫だということです。
     了解、お願いいたします。
     和歌山 なかお

  9. お彼岸は彼の地へ行ってしまった人を偲ぶ節目の一つですね。
    少しずつ心の整理ができればと思います。
    風評被害、本当に残念です。
    正しく怖がるためにきちんとした解説も必要ですね。

  10. 「東日本大震災 医師たちの奮闘 救命」
    なかおさんの、本の抜粋連載を読んで購入を決めましたので
    一言。
    実は私も、(営利目的でないので)著作権はともかくとして、本の内容を細かく載せる
    のはどうかなのかな~。と思いつつ、引き込まれていった者です。
    多分、なかおさんは多くの人にこの本を読んでもらいたくて
    掲載されていることと思います.
    3まで読んで、続きも読みたくなりましたので、本の購入を決めました。
    そうなると、今度は勝手ながら、なかおさんの書き込みは
    読まないようにしよう思います。
    本を読む時は、ところどころ内容がわかっているより、
    全く未知のほうが、より深く入っていけるのではと思うからです。

  11.  化石さん、有難うございます。
     化石さんのご指摘の通り、多くの人にこの本を読んで欲しいと思って、抜粋の連載をしています。化石さんのように、本を一人でも多くの方がこの本を読んでいただけたら嬉しく思います。決して、営利目的ではなく、出版社のまわし者でもありません。誤解のないように。
     和歌山   なかお

  12. 一度もお会いしたことがありませんが、いつも桑山先生の健康や幸せをお祈りしています。 
    なかおさんも、早めに退院されて安心しました。
    本の抜粋の意図、すぐにわかりました。 わたしも買って、みんなにすすめるつもり。 ありがとうございます。

  13. 本の感想やあらすじ、短いセンテンスを紹介する事は何ら問題が無いと思いますが、あまりに長い引用や、頁抜粋はモラルに反すると思います。。。。
    桑山さん、お忙しい中お手数をお掛け致しますが、ご判断下さい。

  14.    意図が分かっていただける方がおられます。嬉しく思っています。
     モラルに反するということなら、削除していただいても結構です。
     お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
      
     和歌山   なかお

  15. いつもブログを拝見させて頂いております!なんか今回のコメントをする方々の内容の一部はちょっと悲しく思えました。私は和歌山のなかおさんのコメントは批判されるようなものではないと思いました。今些細な事で言い争っている時ではないと思いますよ!モラルとかそんな事にこだわっている場合ではないです!私は名取市に住んで居る者です。被災地と被災地以外では最近では距離感を感じております。モラルなんて気になりません!私はなかおさんのコメントはいつも心に響きますよ!人それぞれだとは思いますが、余り私は他人をおとしいれるような事は好みません!先生のブログの内容や先生の活動に関しても批判的な意見や、おとしいれるような行為が度々ありますが、私は余りそういった事は快く思っていませんでした。他人をおとしいれる前に自分には何が出来るかを考えた方がいいと思っています。私は常にそのように心掛けております!まずは皆さん、もう一度心をひとつになりましょう!被災地に暮らしている中の一人として…

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