初のステージ・キャンセル?

 今日は福島県会津は喜多方で、保育士協議会の研修会に呼ばれてのステージでした。

 いつものように診療を終え、急ぎ足でクリニックを出たあと町の臨時職員として働いている光夫さんに会いに行って、腕に光る彼女の腕時計をもう一回見せてもらったあと東北道に入りました。
 外気温は34度を示しています。いやな予感でした。昨年夏も、外気温が30度を超えると我が社用車のエンジンがおかしくなるのです。加速するとガクンガクンガクンと振動して止まりそうになるのです。だからあまり加速しないで夏を乗り切ってきたという経緯があるのですが、今年も早々に梅雨明けで毎日猛暑です。案の定安達太良サービスアリアの手前で非常に激しいがくがくに見舞われ、まずいと思ったときにはどれだけアクセルを踏んでももう前に進みません。東北道の端っこでエンストして止まってしまいました。さて、どうしよう・・・。
 まずJAFを呼んで、主催者さんに電話をし、音響の須藤さんに事情を伝える・・・。冷静にことを進めるようになっているのは常に途上国で活動していると、焦ってもしょうがないから、とにかくできることを整理して一つ一つを確実にこなしていくしかないという思考になっているからですが、この時もそうでした。一瞬、
「初めての自己都合によるステージのキャンセルか?」
 と思ってしまいます。これまで2500回近い開催の歴史の中で大雪や台風、地震、津波、インフルエンザといったある意味天災によってキャンセルになった場合はいくつかあります。でも決して自己都合によってキャンセルになったことはありません。焦りました。これはクルマの故障ですから天災ではありません。自己責任です。
 しかし5分して試しにエンジンをかけてみるとちゃんと動きました。う~ん、確信はないけどひょっとしたら走れるかもと思って先に進みました。JAFの方には事情を説明して、もう少し様子を見ることにしました。
 磐越道に入ってすぐ。またエンストが到来しました。幸い五百川パーキングエリアに滑り込んだので、本道の脇に止めるという危険性はありませんでしたが、このあたりから、
「やっぱり今日はキャンセルしかないかも・・・。」
 という思いがもたげてきました。でも、
「何とはだましだまし走ったらステージができるかも・・・。」
 という思いもあり、その狭間で揺れました。また5分休むとエンジンが復活したので、ソロリソロリと走り出したのですが、10キロほど調子よかったのに、トンネルの手前の待避所でまた止まってしまいました。今度は何度エンジンをかけてももうかかりません。観念しました。そして主催者の方へ覚悟を決めて電話。
「本当にすみません。今日はどう考えてもたどり着けないので、キャンセルでお願いします。」
 主催者の方はとても残念がっていらっしゃいます。でも自分の中には、
「どう考えてもクルマは前に進まない。これはあきらめるべきだ。」
 という考えが頭をもたげていました。自分でもそんなふうに早めにあきらめることが意外でした。これは震災と津波の影響かもしれません。ある程度、やれるところまでやってダメだったら、すっぱりとあきらめて次の方策へ移ろうという思考が身体の中にあるのです。それは、
「人事を尽くして天命を待つ。」
 とも言えるけど、
「自然のことには逆らっても無駄。」
 という考えに至っているからかもしれません。震災と津波による影響「その1」。
 しかしここで明ちゃんが言いました。
「いや、主催者の人に頼んで1時間遅れでもいいからやろう。クルマはここにおいて、高速で走るクルマをヒッチハイクして会津若松まで行こう。そしてそこからレンタカー借りてでも、喜多方に向かおう。そしたら1時間だけでもできるかもしれないよ。」
 あきらめない姿勢というものです。これもまた震災と津波による影響「その2」。
 するとこっちの心にも火が付いて、
「そうだよな。1時間遅れても、あと1時間真剣にステージをやることが大切だ。せっかく集まってくださったみんなに申し訳ない。最後のぎりぎりまで踏ん張ろう。そうだ、会津若松までたどり着けたら、うちの副代表理事、小野さんに向かえに来てもらえばいいんだ!」
 どんどんアイディアが浮かんできます。
 そう、仲間と一緒であればどちらかが積極的な意見を出すことで、何とか立ち上がれる。一人だと、どうしても消極的な方向に考えが行ってしまいそうだけど、仲間がいればお互いが刺激し合って、少しでも前向きな方向の意見が出せる。これもまた震災と津波による影響「その3」です。
 こんなふうに困難に見舞われると、震災と津波によって得た工夫や力、協力の姿勢が出てきます。そうやって少しずつ変われているような気がします。
 結局、その後クルマが少し回復して、小野さんには伴奏してもらいながら喜多方の会場に30分遅れで着きました。少し短くなりましたがステージの1番&震災篇を公演し、無事終了しました。
 いつも言われるんですが、
「トラブルがあったステージの方が、内容が深いし、忘れられないものになりますよね。」
 って、そりゃあ何回も見てくださっている人にとってはそうかもしれないけど、今日が初めての方には本当にヒヤヒヤさせてしまいました。
 でも、こうしてキャンセルしないで乗り切れました。やっぱり一人じゃないって大切ですね。仲間がいることで、いいアイディアが浮かんでくるんですね。
 結局山形まで走ってクルマ屋さんに入れて、山形空港から伊丹空港に飛び、新幹線で移動して今広島まで入れました。明日は呉のステージです。
 激動の一日でしたが、なんとかこうして今日も一日乗り切れました。本当にいろんな人の善意と協力によって物事は進んでいくものだ、と痛感した一日でした。
桑山紀彦

初のステージ・キャンセル?」への7件のフィードバック

  1. はらはらドキドキしましたがよかったです。
    やはり3人寄ればなんとやら、試練をすぐ生かすとはさすがです。後藤さんナイスアイディア!
    それにしても、いまどき持病持ちのクルマは珍しいですが今後に支障はないのですか?事故が心配です。

  2. ご無事で何よりでした。
    息するのを忘れて読ませていただきました。
    震災を経験した誰もが、何が起きるかわからないこと感じたかもしれません。
    あの日緊急地震速報も鳴らず起きた巨大地震でした。
    猛暑は何日も続いて、桑山さんの車がついに悲鳴をあげたのでしょうか。車のトラブルは急に起きるものですね。
    お怪我なく時間短縮になってしまっても、ステージキャンセルせずに終えられよかったですね。
    一人じゃないって本当に大切ですね。
    お二人の冷静さはすごいです。

  3. あきらめが早すぎるぞ!
    それにしても明ちゃん、エライ!
    途上国だと30分遅れは、遅れじゃないし、1時間遅れでもノープロブレムでやりすごせるのにね。
    日本で2500回、ノーキャンセルは記録ものじゃないですか?!

  4. さすが 明ちゃん!!
    一人でなくてよかったね!桑山さん
    走行距離って どれくらいですか?すごいんだろうな~
    車も 酷使されて 辛いんだろうね(^O^)
    ステージ出来て よかった、よかった。

  5. 車は命を載せているので、気を付けてくださいね!2500回って本当にすごいことですね。

  6.  いつものことですが、勤務が終わり夜は十一時に家に帰ります。ニュース23とニュースゼロを遅い晩御飯を食べながら観るのが僕の日課となっています。番組の合間やCMの間に、二つのニュース切り替えて観るのですですが、メディアが同じソースをどう扱っているのか比較するためにそんな見方をしています。
     晩御飯が終わり、二つのニュース番組も終わるとパソコンの電源を入れ桑山先生はどんなブログを書いたのかと地球のステージにアクセスをします。
     毎日、ブログに対するコメントを書いていると、実はブログを読む前にあらかじめコメントの内容を用意していることもあります。コメントの内容がブログにそぐわない場合は(そんな場合が実は多いのですが)ブログに対する感想を書きお茶を濁します。今日は昨日の「奇跡」に関するコメントを書こうと思い(ネタは用意していた)十二時にブログにアクセスしてみたのですが、まだ今日の分はアップされていませんでした。少し待って再びアクセスしたのですがまだ書かれていません。そうこうするうちに、疲れがどっと出たのか猛烈な眠気が襲ってきました。たぶん今頃桑山先生はブログを書いているのだろうと思ったのですが、睡魔が僕を闇の世界へと導きます。ああ、もうダメだあああああああ・・・・。体が云うことを利きません。今日はコメントを書くのを諦めました。
     桑山先生の今日のブログを読み、十二時を回った理由がよく分かりました。
     高速道のエンストに次ぐエンスト。
     喜多方から山形に戻りクルマ屋さんに故障車を入れ山形空港から伊丹空港へと飛ぶ。
     その後新幹線で広島へ移動し翌日には呉へと。本当にお疲れ様です。どうかどうか体だけは大事にしてくださいね。
     今日はエンスト車のブログについてのコメントとさせて頂き「奇跡」についてのコメントは、明日の早朝に致します。では、では・・・・・・。
         和歌山   中尾

  7. ホントにドキドキしながら読みました。
    明ちゃんは本当に頼れるお姉さんです。
    いつも強いなぁと感心しています。
    今回も桑山さんの背中を押す役でしたね。
    車は買い替えも考えた方がいいのではないでしょうか?
    安全な車に乗ってほしいです。
    猛暑の中、皆さんのご健康をお祈りしています。

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