京都に中江あり!

中江先生は、京都府の中学校教諭です。

 その元気さと前向きさは、天をも貫くほどです。今から8年ほど前、宇治中学校にいらっしゃったときにステージで呼ばれました。それ以来転任されてからも宇治中学校は今も続いています。その後木幡中に行かれた先生はそこでもステージをすぐに呼んでくださり、その中学校の転任の後もずっと木幡中学校のステージが続いています。

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(中江先生です。ちなみに中央奥にいらっしゃるのが、京都の音響さん、橋本親分氏です。)

 そして今度三校目の学校に移られて、なんと今日その学校で呼んでくださいました。

 正直、生徒さんたちは落ち着かず、春の着任式でも一騒動あった学校に赴任されました。その中江先生が、

「うちらの3年生は変わりました。まずは接してみてやって下さい。」

と言います。少々緊張しながらステージに向かいました。ところが、ついこの間まで「荒れている」などといわれていた生徒さんたちは、きちんと整列し、静かにステージに始まりを舞っています。映像担当の優子ちゃんからも始まってすぐに、

「静かに聴いてるなあ!」

と早速のメールが入りました。中には服装の乱れがある男子もいるし、横むいて座っている女子もいます。でも、それは彼らなりの聴き方なのでしょう。少なくとも私語で他人を困らすなということは一切ありません。静寂の中でステージが進行していきました。そして終幕。ついに、みんなはきちんと聴き遂げたのです。

 終わりにあいさつの生徒会長が言いました。

「私は、この短い時間にいろんな事を学んだ。困難があっても笑顔を忘れないこと。一人の人間として精一杯やれることをやっていこうとする気持ちを持とうとすることの大切さ。そして、一人一人の存在は小さくても、世界を目指していく力を持っていることを信じたい。」

 と。正直、泣けてきました。

 これまで幾たびとなく大人たちに傷つけられて来た子どもたち。家の中で暴力をふるわれ続けていれば、どうしても暴力で返すようになってしまう子どもたち。誰もほめてもくれなければ、自分なんていらない存在なんだと思ってしまう子どもたち。

 それでも、この「学校」という場所にやってきて、心ある教師陣に触れて居場所を見つけていく子どもたち。中江先生のこの数ヶ月の取り組みで、生徒さんたちがどんどん変わっていったのです。ついこの間までは、ほんの数分だって静かにしていることが難しかったのに・・・。

 ステージが終わって中江先生に聞きました。

「先生が、教師として生徒さんたちに関わり、ぐいぐいといい方向に変えていける、そのコツってなんですか?」

「そうやなあ、それは“あったかいもの”を感じてもらうことやろなあ。この子たちの多くが家でも社会でもあったかいものを感じられないで日々過ごしています。だったらせめて学校にいるときだけでもそんな“あったかいもの”を感じてもらえるようにしたいと思ってきたもんなあ。

 それは、自分がここにいいてもいいんだという肯定感のようなもんやろなあ。」

「せんせ、すごいなあ。」

「いや~ぜんぜんすごない。ただよく他のせんせから“あんたいっつもヘラヘラとよく笑ってられるなあ”って言われるけど、教師が笑顔でおらんでなんで生徒たちに“あったかいもん”が伝えられる?私はこの子らが本当にかわいい。だから無理してでも笑顔で接してあげたいと思ってるんや。」

 その後校長室を訪れました。そして校長先生がおっしゃいます。

「とにかくこの中江には、びっくりさせられ通しです。これまでにはなかった考え方で、いろんな“社会にいる人”との接点を子どもたちに提供しようとするんですわ。だから私はその都度、その外部講師の詳細を調べて、本当に大丈夫か?と気にしてきました。

 でもその甲斐あって、子どもたちはどんどん大人になっていく。中江には、ほんと、びっきりさせられ通しですよ。」

 ちゃんと校長先生も理解してくださっています。でも中江先生は強い方向性で進めるから、反対する先生もいるに違いありません。そこだけが心配。だって何かを成し遂げようとする人って、必ず誰かが足引っぱりますからね。それは往々にして同じ職場の者だったりします。だから、せめて支援せんでもいいから、邪魔だけはしないでほしいなあと思います。

 「やり遂げようとする先生」には、時として邪魔をする人が出てきますが、愚かなことです。羨ましかったり、悔しかったりするのでしょうけれど、だからといって足を引っぱるべきではありません。でもなかなか素直になって応援も出来ないこともあるでしょう。そんな時は、少なくとも邪魔だけしないでほしいと思うのです。

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 これからも中江先生がそのおおらかで明るい気持ちで生徒さんに良い影響を伝え、みんなで前向きに考えられるようになりますように。

 京都に中江あり!

 みんなに逢ってほしい、熱い中学校教師です。

桑山紀彦

京都に中江あり!」への10件のフィードバック

  1. ぐいぐい引っ張られて 自分が前向きに変わる時
    って
    自分に向けられた「温かい眼差し」を感じて 嬉しくなった時
    ですものね。
    北風と太陽みたいですね。
    規則で縛らなくても
    先生の「温かさ」を感じて子供逹は自然に変わるのですね。
    考えさせられます。

  2. 人の心に温かさを届けるにはやはり「笑顔」が大切なんですね。
    いつも「笑顔」でいることは難しいけれど、心がけたいと思います。
    中江先生、これからも学校の太陽でいてくださいね。

  3. 中江先生の言葉いいですね・・・胸に染みました。
    中学生の母です。
    中江先生が学校であったかいものを伝えて下さるなら
    私も子供たちに家庭や地域活動の中であったかいものを感じてもらえるよう努めなくてはいけませんね。
    本日のブログで気付かせていただきました。

  4. 三つの力を併せ持つような貴重な先生がいるんですね。
    きっと子供と同じ目線で行動せれる人だと思います。
    だから地球のステージの価値と使い方を解っていらっしゃるのでしょう。素晴らしい先生です。

  5. 私は、全国どこにでもいる中学生が大好きな、公立中学校のふつうの教員です。世間で思われているよりずっと、公立中学校は温かくて素敵な子どもたちがいっぱいいます。その子どもたちが、私にやる気と勇気を与えてくれます。
    私は、教員になって27年ですが、これまで本当に素敵な子どもたちや保護者や教員のなかまに支えられてきました。自分の力不足と愛情の足りなさにめげることはあっても、辞めたいと思ったことは一度もありません。
    私が何か企んでいると、いつも誰かが支えてくれます。まわりの人たちも協力してくれます。学校はやっぱりチームプレーです。
    そして、その企てで、子どもたちの世界の拡がりを感じると、先生たちみんなで喜びを分かちあいます。私たちの喜びは、なんといっても子どもたちの成長と笑顔です。
    今回のステージもそうでした。小さな学校でも呼べるように、色んな方が力を貸してくださいました。感謝です。
    また、子どもたちが書いた感想を学年便りにして配ると、それを読んだ他学年の先生が声をかけてくださいます。そして、また子どもたちの心の拡がりを喜びあいます。   
    桑山さん ありがとう!
    けど、ちょっとほめすぎですよ。実物大の私を知っている人がコレを読んだら、ひっくりかえります(笑)
    私の「学校」への夢は、27年過ぎても変わりません。これからも夢にむかってがんばりま~す。
    それから、私のお話は今の学校のことというより、27年トータルで出逢った子どもたちのことですね~♪
    最後に、ココにコメントくださったみなさま
    ありがとうございます。

  6. 中学生が好きな普通の先生が、以外に少ないんじゃないかなぁ…って思います。中江先生。基本、ひとが好きじゃなきゃって思うことがあります。
    先生が転勤された後もステージが続くってすごいですね。

  7. ドタバタしていて ちょっぴり まとめ読み。
    美しい紅葉の自然の中で たくさんの 経験をした子どたち。大阪まで声が届きましたよ。
    ケンケンさんたちも 大変だったでしょうが、大自然に包まれ、ほっこりしたでしょうね(笑)
    落ち葉で焼くおいもさんの匂いもして「おなかがグー」
    そして 中江先生。
    ただひとりでもいい 信頼できる人がいれば、子どもたちを 本来の姿にしてくれるのですね。

  8. 自分も以前中学校に講師として勤めていましたが、中学校は思春期の子供たちと対峙するので、大なり小なりきつい思いをします。なのに中江先生は一度も辞めたいと思ったことがないというのは、本当に素晴らしいことです。中江先生にいつかお会いしてパワーをいただきたいと思いました!

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