カンボジアで羽ばたく女性たち

 今日は朝から「アンコール・クッキー」の小島幸子さんにお願いして、工場の見学をさせてもらいました。

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 工場とマダム・サチコさんです。

 徹底した品質管理。髪の毛一本もゴミ一つも工場内に入れないというシステムが完成していること。そしてこだわりのカシューナッツをあくまでカンボジア産にこだわり続ける意味。
 ココナッツの原料だって缶で購入するのではなく、ちゃんと一つ一つココナッツを半分に切ったものを削り取って新鮮さにこだわっています。「ここまでやるのか」と言うくらいの品質管理が、今の「アンコール・クッキー」の人気を支えていました。本当に一つ一つが手作りで仕上げられていきます。
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 そして何より工場で働く40人のカンボジアのスタッフがみんな明るく、素直で、一生懸命働いていることに感動します。挨拶に始まり、丁寧な礼儀作法。それは誰かに「させられている」のではなく、「自分でそうしている」という意志を感じるものでした。
 そこには、
「私はこの仕事で食べている。この仕事で幸せになるんだ。」
 という強い願いを感じるのです。スタッフはそうしてゆっくりと豊かになってきており、最初は自転車だった人が一人、また一人と念願のバイクを買って出勤するようになっています。
「幸子さん、人の生活をささていますね。」
「そうですね、この人たちにも人生があり、その人生をどう支えていけるかを考えることが経営では大切だと思います。」
 自分の利益だけ考えていたら、人間はやっぱり失敗するんだと思う。この幸子さんの「アンコール・クッキー」は、ともすれば上下関係に陥りがちな先進国と途上国という愚かな関係性は全くなく、対等の人間同士がそこで力を合わせているという優しさにあふれていました。
 いつの間にかカンボジアは、そんなみんなの「夢」をかなえられる国になりつつあるんですね。
 そしてそんな幸子さんに偶然問いかけたのが、恵さんでした。
 恵さんは1993年~96年。僕がカンボジア事業で通い続けていたときの友達です。当時夫だった茂さんとP.I.Tトラベルという旅行会社をプノンペンで経営していました。96年で仕事が終わった後、時々連絡は取っていましたが2000年代に入ると全く音信が不通になっていました。
 その恵さんが幸子さんと大の友達だったのです。
 今は、独りになられて姓も変わりP.I.T.Aトラベルの代表としてシェムリアプで旅行代理店の経営者です。その恵さんに逢いに行きました。
 郊外の小さな村の小学校で運動会をやっていました。
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 (右端が恵さん)
「今ね、カンボジアの学校は情操教育を求めているの。だから私は旅行業の傍らで地元の教育省や校長先生と関わって、運動会を企画運営しているんだ。
 日本から若者にスタディツアーで来てもらって、自分たちもやってきたあの運動会を学校の中で企画する。子どもたちは喜び、先生たちも今までにない授業や学校のイベントに大いなる興味を持ってくれるのよ。」
 そう言って、張り切って学校の中を走り回っていました。
 恵さんもこうして自分の人生を生きている。その舞台はカンボジアの大地。
 夜に田中千草さんと会いました。
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 平成18年度2次隊でカンボジアに来た彼女はシェムリアプのワット・ボー小学校で音楽を授業をはじめました。それは非常に人気を呼び、2年の任期が終わるとき1万人の署名が集まり、
「チイ先生をこのまま残してください。」
 という嘆願書が出るまでになりました。しかし、なかなかそこはうまく行かなかった彼女はついに自分のNGOを立ち上げ、このワット・ボー小学校に戻ってきました。今は小学校に所属する音楽の教師として、毎日忙しい日々を過ごしています。そんなチイ先生と50人の音楽クラスの子どもたちは、プノンペンで発表会でした。僕たちは遅れてみれなかったけど、横にいた欧米人が、
「まさにスペクタクル!とてもすばらしい発表でした。」
 と絶賛していました。
 そんな千草さんが言いました。
「私はあえて、NPO法人などにしないでこのままの姿勢でこの活動を続けていきます。そういった団体を立ち上げてしまうと、カンボジアの人は結局頼るようになってしまい、自立にはつながらない場合が多いと思うのです。だからあくまで“私”という存在と子どもたちが良い関係でいけることが、自立につながると考えています。」
 ここにも、ガーナ隊のOBである菅野義春さんがいました。「見て見ぬ振りはしない」という姿勢がとても共通しています。そして思ったのは、千草さんは自分に嘘がつけない人。だから、目の前に大変な人がいたり、自分が必要だと言われたら、どんなことがあってもその人たちの気持ちに応えるという道を選ぶ。
「だから今私はここにいる。それいじょうの理由は必要ない。“すごいですね”と言われても実感がわかない。自分自身に正直でいたいから、ただそれだけのためにやってきたから。」
 
 こうしてシェムリアプで頑張る3人の女性たちの生き方を見せてもらいました。なんと誇らしいことか。
 そんな皆さんに支えられている私たち「被災地」は、これからも「離れているからこそ辛い」という遠方の皆さんの気持ちをこれからも受け止めていくべきだと思いました。
桑山紀彦

カンボジアで羽ばたく女性たち」への3件のフィードバック

  1. 三人ともに、汚れなく博愛精神に満ちた「素」の持ち主のように感じます。純粋な心だから人々に受け入れられるのでしょう。遠い異国でこんな素晴らしいことを実践している日本人がいなんて・・・・感激です。

  2.  「私はこの仕事で食べている。この仕事で幸せになるんだ。」・・・なんて美しい言葉でしょう!
     自分は、長年障害児教育に携わり、養護学校の高3の生徒の就職支援を行ってきましたが、「働くこと」で幸せを引き寄せた子供たちをたくさん見てきました。「働く」ことって本当に尊いことだと日々痛感しています。
     また、「自分自身に正直でいること」は、すごく気持ちの強さやエネルギーを必要としますね。そして、たくさんの困難を伴います。多くの人は、なかなかそれができずにもがいています。それができる三人の方は、本当に素敵です。同じ日本人として誇りに思います。ありがとうございます。いつか現地でお逢いしたいです。

  3. 素敵な女性たちですね。
    自分の出来る精一杯を尽くしている姿に頭が下がります。
    カンボジアでこれからも元気に活躍してほしいです。

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