自衛隊の離任

 昨日、ついに自衛隊の皆さんが帰任しました。

 沿岸部の被災地で最も早く離任されたのがこの名取市からでした。
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離任の朝、名取市のカーネーションを受け取る自衛隊の皆さん
 3月12日の朝、自衛隊の車両が列をなして名取市にやってこられました。その列を見たときに自分の街が被災地になったこと、よくわかりました。どこかで映画を見ているようだったことを思い出します。でも、その自衛隊の皆さんが「守山駐屯地」だったことがことのほか嬉しかった。岐阜県人の僕にしてみれば、愛知の守山駐屯地の皆さんは「東海三県人」だからです。
 そして、自衛隊の皆さんは過酷な仕事を黙々と続けられました。
 遺体の捜索、瓦礫の撤去、それは人間の精神に多くの負担をかける仕事です。いくら訓練を受けている人とは言え人の死体にたくさん出逢うことはショックであり、ストレスです。それでも黙々とその仕事を遂行する彼らの姿に心底頭が下がりました。
 一緒に箱庭療法をやっている小学校4年の太君が「救援の3人」としていつも挙げていたのが警察官、消防士、そして自衛隊員でした。子どもたちの目にも「がんばる人」として映り、将来自衛隊員になりたいという子どもも時折聞きます。
 思えば東ティモールでもよく自衛隊の皆さんの姿をみていました。
 当時「地球のステージ」が識字教育を行っていたボボナロ県では自衛隊が駐在し、道路の補修を黙々としていました。地元の人たちにも歓迎され、「日本人=自衛隊員の誠実な姿」として受け止められていました。首都のディリで買い物をしていると、よく派遣された自衛隊員と会いましたが、話しかけたり話しかけられたり。同じ日本人として誇らしかったことを思い出します。
 名取市は豪腕の市長の元、劇的に瓦礫撤去や遺体捜索を行い、湾岸地域で4番目に死者行方不明者が多い状況にもかかわらず立ち直ってきています。だから、自衛隊の皆さんが一番最初に撤退した町として、評価されることでしょう。それは同時に寂しさにもつながります。あちらでもこちらでも自衛隊員の姿があると、どこかで安心していました。
「今日も働いてくれている」
「今日も遺体捜索をしてくれている」
 そんな役割分担のような感じがしていましたから、いよいよの撤退を受けて今後は自分たちだけでやっていかないといけない、という不安にも駆られます。
 でもいつまでも頼っていてはいけない。名取市民が今後は一丸となって町の復興に尽力していかないといけないときが来ました。それでも警察官の皆さんは、まだまだ香川県警や京都府警、先日は沖縄県警も来てくれていて(どうやって来た??)、正直ホッとしています。もう少し、もう少しいてほしいな、と思っているのは僕だけではないように思います。
 さて、そんな「自立」を促されている名取市民として、今日はすぐ近くの下増田小学校で、父兄の皆さん対象の「こころのケアの勉強会」が開催されました。
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 震災から3ヶ月目に入り、子どもたちには様々な変化が出てきています。それをいち早く察知し、適切な対応をするための勉強会。これで通算にすると3回目の勉強会になります。名取市は名取市教育委員会が積極的に「こころのケア」への取り組みをおこなっており、桑山はその中でいろんな役割を果たさせて頂いています。中でもこういった親御さんとの勉強会はとても重要だと思います。子どもたちはなかなか上手に言葉でストレスを表現できない所がありますから。
 今日も、指しゃぶりがずっと続いている小学校4年生のお子さんや、夜寝ることが不安でなかなか眠りにつけないお子さん。夜の闇に向かって窓から「地震警報発令、地震警報発令」と叫び続けるお子さんの話など、複数の相談がでました。
 やはり子どもたちにのしかかっている負担は大きいようです。少しでもこういった状況が世の中で共有され、どう対応するといいかの方法論がみんなで分かち合えれば、個々の不安も減ると思います。そんな点でこういったブログを通じて、
「そんな状況にあることもあり得るのだ」
 ということがわかるだけでも、まずは不安の解消につながるかと思っています。
日々、様々な変化が被災地にはあります。
桑山紀彦

自衛隊の離任」への9件のフィードバック

  1. 自衛隊隊の皆さんお疲れ様でした。私の子供達の同級生も行っていたみたいです。本当に黙々と働いている姿に頭が下がりました。さて、 今朝、もうじき駅に着く電車の中でいつも一緒になる美容専門学校の若者が、「アイツ、まじへたくそ。死んで欲しい。」と大きな声で言ってました。思わず、振り向いて見てしまいました。‘死んでほしい’簡単に使うなぁ!あんたがどれだけの腕前か知らんけど、へたくそじゃから練習しよるんじゃないそ。人の事とやかく言う前に自分をみがけぇ!て心中で叫びながら‘死ねバイいいなんて、言っていい言葉?’なんて、言ってしまいました。不快な言葉を聞いて思わずいうてしもうたけど、明日もきっと同じ電車…

  2. 平和憲法下、何度か名称を変えた自衛隊が平和の使者?に見えます。自衛隊が見直されたのではないでしょうか?
    今後もこうした形で市民権を定着して行ってもらいたいものです。
    視察の政治家に喰ってかかるTV画面がありましたが、子供はそれが出来ないから、大人の支えが必要なので「勉強会」は重要だと思います。
    しっかりした大人作りのために、大変な仕事でしょうがよろしくお願いします。

  3. イギリスの田舎から応援させていただいている者です。19日のブログを読んですぐにコメントを、と思いつつ今日にいたってしまいました。まずは改めて桑山先生、そしてスタッフの方々本当にご苦労さまです。桑山先生が無条件に全身全霊をもって活動をされ、またそれを言葉にされているからこそこれだけ多くの人の心を動かし続ける事ができるのだと思います。私自身も、きっかけは友人の紹介でクリニックのことを知ったわけですが、やはり先生のブログを読み、心を強く動かされ、とにかく考えるよりも先にサポートしたい!という思いを原動力にこの2ヶ月間いろいろな募金活動を続けて来ました。そしてすでに海外では日本の話はほとんど耳にすることがなくなった今、まさしく先生の毎日のブログが私の活動の源です。日本のニュースが来なくなったといっても、こちらの人は皆今被災地が、そして被災地の皆さんがどんな様子なのか、とても知りたがっています。ですので、できるだけ正確な情報をこちらの人に伝えるためにも、先生のブログはなくてはならないものです。毎日のお仕事に加えて大変なことと思いますが、是非これからも多くの人達をつなげるツールとして書き続けていただければ有り難いです。もちろん、お疲れの時はお休みくださいね。これまた難しいことだと思いますがーーー。これまで単発的な大きなイベントをいくつか行ってきましたが、継続的にサポートさせていただくために何が出来るか考えた末、先週から友人の経営するカフェの片隅を借りて週一度だけ営業するチャリティー寿司ショップを始めました。イギリスは今や寿司のみならずおにぎりもちょっとしたブームです。ただロンドンのような都会ではなくかなりの田舎なのでどれだけの人が興味を持ってくれるか不安でしたが、初回は朝9時から夕方5時まで休みなしでお寿司とおにぎりを作りつづけるほどの大盛況でした。また明日弟2回目の営業です。すでに予約もはいっています。今、ここで、できることーーーみてみぬふりをしないーーーこのふたつを心にとめて楽しみながら頑張ります。今日の高校生のいじめの話は本当に悲しいですが、人間は知らない世界のこと、違う世界に生きる者を差別、もしくは排除することによって優越感を得ようとする愚かな部分を持ち合わせているーーーということ、海外にいると良く経験します。次元は違いますが、私も高校生の時オーストラリアに留学しましたがバス停に立っていただけで石を投げられたこともありました。子供達は木製のお弁当箱におにぎりやおいなりさんをもってイギリスの学校に通っていますが、最初の頃は数人の子供達に「変なもの持ってきて」とからかわれていました。幸いたくましい息子達なので「これは日本の食べ物で、美味しいんだよ。」と堂々と食べているうちに誰も何にもいわなくなったようです。理不尽なこともたくさんある世の中ですが、同時に有り難いこともたくさんあるので前に進みつづけることができるのだと思います。

  4. ~愛知県より~
    昨日、守山駐屯地第10師団の方々が宮城県から戻ってみえたと今朝のニュースで流れていました。
    任務中、苦しいことも嬉しいことも分け合い、一人で抱え込まないよう心がけて任務にあたられ、今後も定期的に心のケアを組み込んでいかれるそうです。
    テレビに向かって思わず拍手。どうもおつかれ様でした。本当に本当にありがとうございました。
    やはり、お体の疲れもかなりだと思いますが、特に心の面を語られていたことに任務の過酷さを感じました。

  5. それぞれの所で それぞれの方が働いておられる。任務とはいえ 過酷なお仕事。
    こころなくして出来ないお仕事。ゆえに こころに多くの傷を持ち帰還されていると聞く。
    名取の自衛隊さんたちも 帰られたんだ。名取の皆さんも寂しいでしょうね。
    いつかは、帰られること 分かっていても・・
    名取の皆さんたちが 力を合わせ 立ち上がっていかれることを願います。
    それには、私たちが ついているよ(何も出来ないのに偉そうにごめんなさい)と メッセージを送り続けることですね。
    桑山さん 無理せず ファイト!!

  6.  村上龍の恋愛小説「心はあなたのもとに」の中にこんな一文があります。
       ーーそして、自信には二種類あるとわかったのです。一つは他の人から与えられる自信。生きていてもいいんだよ、という自信。(中略)愛情ってことかも知れないけど。生きていてもいいんだよ。そういう自信は、他人からしかもらえないものなんです。
     二つ目の自信は、生きていけそうだ、という自信。自分自身で捕まえないといけない自信です。だから・・・・・---
     桑山先生が、患者さんの話を聞いて一緒に泣いてあげる、これってー生きていてもいいんだよという他人から与えてあげている自信なんじゃないでしょうか。「心のケアー」の勉強会は、参加している人たちが自分自身で捕まえようとしている自信というものなのではないでしょうか。
     恋愛小説もたまには「いいこと」書くなあと思ってしまう僕ですが、しかし、最近の恋愛小説というのは時代を反映してか不倫を扱ったものが多いような気がします。村上龍の「心はあなたのもとに」は妻子ある社会的地位のある人が元風俗嬢との不倫ですが、ベストセラー作家東野圭吾の「夜明けの街で」は不倫など起こしそうににもない平凡なサラリーマンが社内恋愛に落ちいってしまいます。平凡な日常に隠れた「恋の罠」。古い話でいうと渡辺淳一の「失楽園」というのもあります。でも「失楽園」までいくと、ちょっとやりすぎだって思えてしまいますけど、東野圭吾の「夜明けの街で」はなるほどなあ、そういうこともあるのかなって妙に納得してしまうところはあります。これは一気に読みことができました。ほぼ徹夜。
     「恋の魔力」かめちゃくちゃ面白かった。舞台は横浜、しかも「恋愛仕立て」のミステリーです。自分が愛した人、実は不倫だが、時間とともに殺人犯なのではないかと疑うようになる。そうなると、もう恋愛どころではない。ああーあ、僕もこんな「レンアイ」してみたいいいいい。こわい、こわい。でも、そう思わせてしまう。しかし、この小説の主人公の男のようにオレはそんなにいい男じゃあない。もちろん福山くんにはマケテルシ。僕には、ムリ。ムリ。
     「横浜、福山」といえば、今度の土日は福山コンサートに行くことを思い出す。場所は、横浜アリーナだっけ。そうだ、そうだ。
     ぶ男、は、ぶ男、なりに、いい男を見てナグサメるしか手がないか。オレって田舎者だもんなあああ。
      和歌山 れんあいに程遠い なかお

  7. まだまだ沢山の方々が心の負担をかかえてらっしゃる。
    先生の、活動が沢山の方々の支えになっていることは確かです。
    先生、本当にありがとうございます。

  8. 自衛隊の皆さん、任務お疲れ様でした。
    これからも災害復興支援をお願いします。
    十分な休養を取っていただきたいと思います。
    「こころのケアの勉強会」で学んだ保護者の皆さんは、
    きっとご自身のケアにも役立ったのではないでしょうか。
    地域が一体となって子どもたちを育んでいく風土が
    作られて行くことにも大きな意味があると思います。
    一日も早く子どもたちが安心して暮らせるように
    なりますように。

  9. 息子の「死」を 受け入れ 立ち上がろう とする過程で 大きな支えになった言葉があります。
    檀家のお尚様の言葉でした。
    「早く亡くなったから〝 かわいそう〟 と思わなくていいんだよ。
    この世は 〝修行〟 苦しい学びを沢山 こなさなければならない。
    早く あの世に行った息子さんは この世の苦行の必要のない 高尚な魂の人だったんだね。」
    お尚様の言葉で、亡くなった人は、私達ほど 「辛くはないのかもしれない」と思えました。かえって、私達を心配しているのだと思いました。だから、あの世に行った人に、心配かけないようにしなければならないのです。息子は言うと思いました。「人を怨んだりせず、明るい心でいるようにしてね。」それが 遺された私の、この世の修行の課題 なのだと思いました。
    死別の苦しみから 立ち上がろうとする時 様々な方の 支えに助けられましたが その中に 〝宗教的な考え方〟にも助けられました。健全な形で 心のケアに宗教者が 関わって下さったら 救われる人がたくさんいるのではないでしょうか?

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