下増田小学校の避難所

   ついに昨日、我がクリニックのすぐ横の下増田小学校体育館の避難所から自衛隊の炊き出し隊が撤退しました。

 まだ仮設住居への入居が決まっておらず、今後もしばらくは避難所生活が続くのですが、自衛隊にも事情があるんでしょう。どこに行っても自衛隊員の姿には頭が下がるので、これもやむなしというところなんだと思います。自分たちは体育館の横にテントを張って、雨の日も雪の日も、そこに泊まりながら下増田小学校の70人の避難の皆さんのためにご飯を作り続けてきた自衛隊員の皆さん。昨日の夕食はお別れの会が開かれていました。

 今後は朝はパン一つ、昼は自由。そして夕方はお弁当になります。これは市が手配するお弁当なのですが、どうも到着は15時くらい。すると夕方には冷めてしまいます。そこで「地球のステージ」と名取市の担当官は話し合い、以下の物品を無償提供することとなりました。

1)冷蔵庫:大型と中型1台ずつ~今後気温が高くなるので、皆さんがお昼用に自前で用意したものが悪くならないようにという観点からの提供です。

 配送なので金曜日に到着します。

2)炊飯器:一升炊き2機~朝パン一つでは大変です。これでご飯を炊いてお味噌汁と共に提供する方針です。

 今日買って直接避難所にお渡ししました。

4/20-1

義援金で買った一升炊き2機

3)電子レンジ:夕方のご飯を温め直すものです。

 これまで多くの皆さんから義援金をいただきました。それは病院の車両フリード君だけでなく、炊き出しの時の材料費や、閖上小学校と閖上中学校の先生たちと一緒に始めた勉強会時の機材費など、確実に使わせていただいております。今回の数十万円になるこの提供も皆様からの義援金を直接充てさせていただきました。

 これで下増田小学校体育館に残る皆さんの食生活が改善されればと願っての提供です。皆さん義援金、いつも本当にありがとうございます。

 早々、昨日は江里ちゃんに会いに行きました。

 おばあちゃん、お母さん、弟君の4人で市内のマンションの一室を借りることができていました。江里ちゃんがんばって保育園の仕事を始めていました。でも元気がありません。お母さんが言いました。

「実は、お父さんが見つかったんです」

「・・・」

「家の近くの瓦礫の下にいました」

「・・・」

「22日に葬儀ができそうで」

「ようやく逢えましたか」

「はい」

 気丈なお母さんです。

 江里ちゃんは寂しそうでした。でも僕が福井から買ってきたお土産をいじりながらゆっくりと、でも何かを決心したそうにしていました。江里ちゃんは一生懸命こらえているんだと思いました。

 こうして一日一日が過ぎていきます。僕たちはまだ淡々と目の前の一段をみながら、屈みながら進んでいくのだと思います。


桑山紀彦

下増田小学校の避難所」への12件のフィードバック

  1. テレビに出るかなり大勢の避難民のいらっしゃる避難所だけでなく自衛隊の方達は色々な所で仕事をしてるんですね。子供の同級生にも二人自衛隊員になった子がいて、今、被災地に行ってると聞きました。
    義援金がどう使われているか、目に見え嬉しい限りです。

  2. 九州なのに
    ここ数日は日中でも冷たい風に震えあがっています。
    冬に逆戻りしたかのような気候に、
    東北の、名取のみなさんはどうされているのかと
    思っていました。
    楽しみなはずの食事も
    量もさりながら
    冷たかったり、時間が合わなかったり、
    どんなにか不自由な暮らしをされているのか、
    小さなお子さんのこと、
    ご年配の方たちのこと、
    遠い街からでは
    何もお手伝いもできないような
    気もしてしまいます。
    でも今日の桑山さんのブログのように、
    日々の様子を知らせていただけると、
    自衛隊の炊き出しが終わったこと、
    義援金で買えた生活用品のこと、
    心のケアの学習会のこと、
    一つ一つのことが、
    私たちが春のアースデイなど
    各地で開かれるイベントに参加して、
    募金活動のチャンスをめいっぱいがんばりたく
    なります。
    今度の土日は
    山口県下関のアースデイに行ってきます。
    一日も早く
    穏やかで暖かな陽射しがみなさんに
    降り注ぎますように・・・。

  3. 義援金を有効に使ってもらえているのが分かるのって、嬉しいです。
    昨日ブログを読みながら「画材を送りたいな‥」と思ったのですが、義援金だとニーズにピタリと合ったカタチで想いが叶う。魔法みたいです。
    桑山さんが、大口町のステージで「(移動中、駅で募金活動を見て)今回の震災に対して、たくさんの方が募金しようと思ってくれている。その気持ちが嬉しい。金額ではなく。」と言われたことの意味が逆にわかりました。

  4. たくさんの人達に支えられ、避難所は運営されています。
    連日の報道では、避難所の過酷な生活とし不自由さを言われています。
    避難している人達が積極的に活動している避難所と、そうでないところとさまざまでした。
    自主、自立、思いやりの心は長引く避難生活に必要と思いました。
    お互いを支え合う気持ちを持つ人がいる半面、身勝手な行動、言動 盗難も現実にあります。
    震災で受けた辛さから立ち直る力は何なんでしょう。
    周りからの援助を、ありがたく感じる気持ちを忘れないでいたいと思います。
    クリニックからの家電はとても役立つと思います。
    避難されている方々のご健康をお祈りします。 

  5. 桑山紀彦
    まだ名取~仙台の沿岸に住んでいた後輩を探しています…。
    差し支えなければ心理社会的ケアの指針、概要について発信して頂けないでしょうか。たくさんの教員と保護者が必要に感じているけど、何をどうしたらいいか分からない方もおられます。マニュアル的な本はたくさんあるけど、大津波というこれまで経験のない大災害ですから、ケアする方法は、今、被災地の先生方が日々実践されている中から生み出された方法が一番リアルで被災地の方の思いを汲み取って下さると思います。被災地以外の場所から、被災地に入る心のケアチームのためにも、どうか発信して下さいませ。

  6. 冒頭、桑山先生への敬称が抜けました。大変失礼をしました。ごめんなさい。

  7. 要るときさっと用意出来る地球のステージ。流石です。
    大きい団体は、こうはいきません。
    どことは 言いませんが・・
    義援金友だちから預かっています。もう少し貯まってから送ろうと思っていましたが、今日送ります。

  8. 避難所の様子も日々変わるんですよね。自衛隊の炊き出しも永遠に続くわけじゃない。
    外からの支援が終わった時には避難所にいる方達が自力でやっていかなくてはならないんですね。
    まだまだ厳しい現実を知りました。
    地球のステージに寄せられた義援金がささやかでもお役にたてて良かったです。
    温かいお味噌汁、きっと喜ばれるでしょうね。
    皆さんもどうぞ体調を崩しませんように。

  9. 陰ながら支援させていただいた気持ちが、役立てていただけるのがわかり、嬉しく思います。
    私が所属する団体は お茶やお花を通して 皆が笑顔になれることを願って活動しています。
    園児~大人が、自分たちにできる震災支援は何かを考えています。
    被災地に花を贈り、被災者に元気になってもらおうとか
             犠牲になられた方の餞にしたいとか
    お茶会をして 元気になってもらいたいとか…
    実現できるかどうかは 被災地のニーズを探りながら
    考えていきたいと思います。
    特に 小中学生の提案には
    自分たちの活動が どのように生かされたか わかるようにし、
    被災地と こちらで 元気の循環できるようにしたいと思っています。
    私たちができること あれば是非教えて下さい。
    やはり 義援金をお送りすることが ベストなのかな?

  10. 冷蔵庫! 
    よかった、よかった~。
    寒暖の差の激しいこの季節。札幌も寒いです。
    (5月半ばまでは、平気で雪が降りますから・・・)
    東北は「梅雨」のことも考えなくてはいけませんよね。
    札幌の「むすびば」からも、冷蔵庫の支援をしたばかりです。郡山からの情報で、南相馬の避難所に届けました。
    ほかに、泥かき作業の方たちの防塵マスクも、すぐ手配しました。すべて、募金で賄っています。
    23日からは、気仙沼に大工さんのチームが向かいます。
    市民が寄り集まった(今、300人くらいのメンバーです)新しい団体「むすびば」は、大きな団体のようには動けませんが、多様な人の集まりなので、現地からの細かい要望が、人から人へのつながりで伝わってきています。
    その要望に、即、対応できるのが、小さなところの強みかな~。情報共有も早いので、誰かが何か言えば、誰かが「私できるよ!」と応えていますね。
    このブログを毎日読んで、学ぶところも大きいです。
    「地球のステージ」に関しては、まず、募金集めですね!
    私たちの送ったお金が、こういうふうに具体的に役立っているということ、必ず、仲間に伝えます。

  11. 被災地の戦いは続きますね。今日も明日も、またその次も。
    淡々と大変な日々が続くと思います。本当に蟻の一歩の連続だと思います。いつ果てるとも知れない日々。でも、ゴールを焦らずに求めないでください。辛いかもしれませんが目標を遠くに置いて、今日できることは今日おこないそれが確実な進歩になっているはずです。
     炊飯器も冷蔵庫もそれらすべてが明日へとつながっています。
     そして、その明日へのつながりが被災者の人々のこころを癒していくのだと思います。
     人を思いやる気持ち、それが希望であり、そのことが明るい未来につながる夢の始まりだと思います。
       和歌山 中尾

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