悩むモハマッド

モハマッドは成長していました。

大学4年生の今、彼は卒業後のことを考えています。

もちろん目指すのは「本当のことを伝えていく」ためのジャーナリスト。でも、ガザでカメラマンやジャーやリストとして食べていくことは至難です。今では大学を卒業しても全く職がありません。本当に職がないのです。

一つにはトランプ発言によりUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機構)への拠出金が凍結され、色んなところに影響が及び、ガザは特にUNRWAに依存してきたのでその影響が多いと言うこと。そして欧米の支援もアメリカの親イスラエル寄り路線を意識して冷え込んでいることが大きな原因です。

そんな中でモハマッドが就けるような仕事は全くといっていいほど、ないということです。

そんな中モハマッドが言いました。

「フロントライン(「地球のステージ」の英語名)がやっている心理社会的ケアの中の映像に関する部分の支援をすることで、仕事にしたい。」

でも、そんな余裕は実際にはないのが実情です。ファシリテーターになるというのであればそれは道もあるけれど、メディアを扱う人材をフルタイムで雇うことはできません。そう伝えるとモハマッドも哀しそうにしています。

でも一方でアーベッドが言います。

「13歳で心理社会的ケアに参加したモハマッド。彼の”今”の姿はすなわち心理社会的ケアがいかに有効であるかの証明だと思う。ちゃんと向き合い、社会における自分の役割を果たそうとしている。まさにそれはトラウマケアの第3段階~「社会化」のプロセスだからね。」

その意味ではモハマッドが大学を卒業後、どんなふうに進んでいくのかの責任を背負っているように思えてきます。

いつまでも支援することはできないけれど、でも彼がどうやって自分の役割を社会の中で果たしていくのかの模索の手伝いをしていくべきだと思います。

「僕が監修した、子どもたちの映画を見て、ぜひ決めてくれ!」

そんなモハマッドが関わって完成した映画の試写が今日、行われます。

桑山紀彦

 

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