色を描いたモハマッド

今年もモハマッドに会いました。
 モハマッドは昨年夏の活動の時、「戦争のイメージ」の際に色を塗らなかった少年です。
 「空爆を受けている僕の街に、いったい何の色があるというのか。色は希望の象徴だ。希望がなければ色なんて塗れない」
 痛烈なメッセージでした。
 それから1年が経って、今年は「夢や希望のイメージ」です。
 モハマッドはどんな絵を描くでしょうか。
 現在もガザ地区は封鎖されています。対イスラエル軍との戦いは日常であり、先日のトルコからの支援船の試みは、こちらでも大きく受け止められており、みんな心から支援船に期待していました。それが撃退されてしまったことへの怒り、というか落胆はまたひどく、みんなの孤立感はさらに深まっています。
 加えて現在のハマス政権へのいらだちと憤りもひどく、常に「戦って何でも解決する」というゲリラ的思考が政治のあらゆるところもみられ、人々はいつも嫌な思いをしています。元々総選挙ではますを選んでしまった経緯があるのですが、当時の与党だったふぁたはの汚職がひどくて、それに反発する形でハマスを選んだのです。でも選んだハマスはまともな政治をする能力がなく、いつの間にかこんな大混乱に至ってしまっているのです。
 昨年6月にハマスによって拘束されたダルウィーッシュは今も、ひどく傷ついてまともに職場復帰できないような精神状態が続いています。そんなひどいことを元々の仲間にされている現在のパレスチナの人々の心の落ち込みは、想像を絶するものがあると思います。
 そんな中、モハマッドは絵を描きました。
 見事な、色のある絵でした。そこには2機の飛行機が。そして日の丸のはためく船が描かれていました。
モハマッド2010その2
モハマッドと絵
「この飛行機を使って世界を旅したい。日本に行きたい。それが願いだ。そしてこの船はトルコのようにイスラエル軍の封鎖を破って、僕たちに大切な生活支援物資を持ってきてくれる日本の船だ。それが今の僕の願い」
「どうして日本へ行きたいの?」
「それは自由の象徴だから。自由にどこへでも行けるということは、僕の一番の願いなんだよ」
「どうして今年は色をぬったの?」
「去年は空爆という、希望のない、怒りそのものだった。そんなものに色はないよ。でも今年は自分の希望だよね。希望には色があるべきだ。心からそう願うことに僕は色を塗るよ。」
 
 その希望が心ない紛争によって打ち砕かれたり、未だかなわなかったりしていても、モハマッドはちゃんと色を塗りました。
「願うことは自由だ」
「願うという気持ちは誰にだって出来るはず」
 どんな状況に陥っていても、希望を持ち続けるという強い精神の表現された描画セッションでした。
今日は女の子たちとサマーキャンプ。海を見に行く日です。
桑山紀彦

色を描いたモハマッド」への1件のフィードバック

  1. 今回は無事に入域出来て何よりです。
    状況は好転していませんから、子どもたちはやはり不安定な気持ちなのでしょうね。
    少しでも楽しい気持ちをプレゼントできるといいですね。
    海!私も見に行きたくなりました。

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