空爆から1年を経て

雲ひとつない澄み切った青空の中、1年ぶりにガザを訪れました。
昨年救援に入った日も快晴で、青空の中爆弾が落ちてきた様子を今もはっきり覚えています。
この1年間、ずっと自分の中に封印してきました。あの空爆体験から1年、今回またあの同じ場所に立った時、どんな恐怖を覚えるのか、自分がどう対峙できるのかとても不安でした。ましてや、今回はひとり。その不安は倍増でした。「行かない」という選択肢もあったと思います。でも「許可」が出ているのに行かないという選択はないだろう、そう、昨年の空爆時に一歩踏み出した時と同じ心境でした。エレズ検問所で見送る桑山さんに、行ってきますと手を振り、一歩踏み出しました。言葉では言い表せない心境です。去年は一緒に入りましたが、今年はひとり。許可が出ず見送らなければいけなかった桑山さんの気持ちを思うと、頑張らねば、そう思いガザに向かいました。
何故そこまでして行かなければいけないの?皆さん思うかもしれません。
でも、実は自分が一番そう思っていました。強いなあ、と言われますが全然強くなんかありません。いつも今回が最後かも、そう思いながら通い続けています。それなら、何故?
それはいつも待っていてくれる人がいるから、それだけです。正義だの、大義だのは全くありません。ガザに入るまでの労力と不安を考えると、これで最後にしようと思うのですが、いざみんなに会うと、来て良かった、また来よう、そう思えるんですよね。
エレズ検問所を抜け、長~い回廊を歩いてガザ側に辿り着くと、いつもの笑顔がありました。昨年の空爆下、ずっとそばで通訳してくれたアベッド。そして爆撃の中、私たちを送り迎えしてくれたマジディ。戻ってきたんだな、そう心から思いました。
「ずっと待ってたよ。あの大変な時期、ずっと一緒にいた戦友なんだから。」
そう言葉をかけられた時、涙がこみあげてきました。素直に嬉しかったです。
そしてラファへ。ダルウィッシュの家族が、いつもの笑顔で出迎えてくれました。「お帰り」の言葉がとても心にしみました。

ダルウィッシュの家族
みんな明るく元気です。生活状況が改善したわけでもなく、依然として苦しいまま。それでも前向きにいようとするその気概に感動します。
自分たちにはね、物質的な豊かさはないけど、夢と希望だけはあるんだよ、それは心の中に持ち続けられるものだから。今何もないことに不平を言い続けるより、今あるものに感謝し、そしてこの先少しでも夢や希望に近づけるようにしっかり今を生きるんだよ、と言ってぽんと肩を叩かれました。
夜はダルウィッシュ一家、マジディ一家とガザに出かけました。あの空爆の激しかったガザへみんなとくり出したのです。その道中がこれまたすごいんです。8人乗りのタクシーに、2家族合計14人がぎゅうぎゅうになりながら乗ってでかけます。
どうやってこの人数が1台の車に?そう思っているのは日本人の私だけ。みんなにとっては普通のこと。1台のスペースしかないならないなりに、みんな我慢しながら協力しあって乗り込みます。全く身動きできない中でも、みんな思い思いに会話し歌を歌い、本当に楽しそうに乗ってるんです。
どんなに狭くても痛くても、こうやってみんなで分け合って生きてるんだなと感じ、自分の足の痛みがこの人たちに一歩近づけた気がして、痛みにも意味を感じながら乗っていました。物質的な豊かさはないかもしれない。でも小さなことに喜びや幸せを感じられる心の豊かさがここにあるんだな、そうつくづく思いました。
1年ぶりにガザに入りましたが、そこには恐怖心はありませんでした。いつもの笑顔に会い、懐かしさの方が勝ったのかもしれません。本当に懐かしかったです。
最後に、今回エルアマル学校を訪ねてみるとかなり修復が進んでおり、空爆の破壊による傷跡も少なくなっていました。皆さまからご支援をいただいたおかげです。ありがとうございました。全修復に向けて、少しずつではありますがこれからも継続して支援を続けていきたいと思っております。そして皆さんの応援の気持ちをこれからもガザの人々に届けていきたいと思います。
エルアマルのみんなと
 修復前  修復後(現在)
 修復前  修復後(現在)
後藤明子

空爆から1年を経て」への6件のフィードバック

  1. あきちゃん、ありがとう。あきちゃんの素直な思いがじ~んと伝わってきます。
    相変わらず大変な状況の中、みんな助け合って希望を持って暮らしているんですね。
    笑顔がまぶしいです。
    学校の修復も進んでいる様子。銃弾の痕が塗りつぶされてホッとします。
    私たちに出来ることを続けて行きたいです。
    あきちゃん、一人で気持ちもピンと張っていることと思います。
    どうぞ体調に気をつけて無事に戻って来てくださいね。

  2. 久しぶりに涙しながら、ブログを読みました。
    akiちゃんのレポートもほんと、久しぶりですね。
    『物質的な豊かさはないけど、夢と希望だけはあるんだよ、それは心の中に持ち続けられるものだから』・・・今の日本ではどうでしょうね。とても考えさせられる言葉です。さまざまな状況は違えども、それぞれが懸命に生きているんだと思います。また勇気をもらった気がします。
    「待っていてくれる人たち」に会えてよかったですね。
    akiちゃんを見ていると、「一歩踏み出す勇気」をいつも感じます。未知のことにもチャレンジするんですから。(桑山さんのリードというか、ある意味桑山さんをサポートする役割を担っているのでしょう)
    日本の子どもたちが書いた「平和の絵」ですか。
    渡せてよかったです。手にした子どもたちの笑顔が物語っていますね。ただでさえ荷物が多い中ですから、大変だったのではありませんか?
    ステージで伝えるのは桑山さん。帰国後のステージがまた楽しみになってきます。
    お二人ともどうぞお気をつけてご活躍ください。

  3. 明子さんが一歩踏み出した情景が目に浮かびます。
    ただ、待っていてくれる人がいるから、それだけ。
    それだけで人は多くの不安や恐怖を乗り越えられることもできるんですね。
    なんて、爽やかな生き方でしょう。
    桑山さんからもいつも感じる爽やかさです。
    マイナスの要因はたくさんあっても、待っていてくれる人たちのためだけに前に進む。
    雲が散って青空が一面に広がっていく時の爽やかさを感じます。
    今日のガザもそんな青空ですね。
    前のブログでは勇気をいただき、今日は爽やかさをいただきました。
    明子さん、ありがとうございます。
    明子さんの笑顔に会いたいです。
    逆境の中にあっても夢と希望を捨てないで感謝して生きるガザの人たちの心の豊かさと、勇気ある明子さんの姿を、より多くの日本人に伝えていきたいなあと、あらためて思っています。

  4. 本当に心にしみます。自分の狭さに愕然としてしまいます。みんな頑張っているんだとこのブログを読みながら、自分を奮い立たせ、明日の仕事の準備にとりかかってます。後藤さんありがとうございます。気を付けて戻って来て下さいね。

  5. akiちゃんの無事を知って、ほっとしています。
    体の無事はもちろんですが、心の無事は・・・と思っていました。
    一年後に同じ場所に立って、修復の進んでいる現場が見られて、本当によかったです。akiちゃんの心も、何かひとつ前へ進めたんじゃないかと思っています。
    「待っていてくれる人がいるから、そこへ向かう」・・・。
    最高の理由です!

  6. みんなの笑顔に包まれて一段と
    輝く明子さんの素晴らしいこの笑顔!
    明子さんを見つめる二人の少年。
    この一枚からジーンと伝わってくるものが
    あります。感動の涙をありがとう! 
    貴女はここでまた一段と大きくなられましたね。不安ながらも勇気を出して踏み出した
    明子さんの検問所での一歩は非常に大きな意味を持っていると思います。 素晴らしい”相棒”をもってらっしゃる先生も感慨深いものがおありと推察いたしております。
    「自分たちにはね、物質的な豊かさはないけど、夢と希望だけはあるんだよ、それは心の中に持ち続けられるものだから。今何もないことに不平を言い続けるより、今あるものに感謝し、そしてこの先少しでも夢や希望に近づけるようにしっかり今を生きるんだよ、と言ってぽんと肩を叩かれました。」
    心に響く言葉です。 
    ”地球のステージ”から学ぶものはたくさんあります。私たちが得る感動と生きた教訓を
    ひとりでも多くの人たちに伝えられるように
    ひとりひとりが自分たちにできることで
    ”地球のステージ”の輪を更に広げていくように努めたいものです。
     

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