13年、退職

ついに13年間勤めた医療法人二本松会、上山(かみのやま)病院を退職しました。
 そんな一緒に働いてくれた皆さんに手紙を書きました。
「山形大学の精神科医局に嫌気が差し、そこの派遣で行っていた精神科の病院にもなじめず、ついに出逢ったのが上山病院でした。
 自由闊達な雰囲気、明るいスタッフ、前向きな人たち、そして優しい医局の雰囲気。一気に上山病院の虜(とりこ)になり、上山病院のスタッフであることが、とても誇らしかったことを昨日のように想い出します。
病棟
担当していた7病棟のスタッフと
 しかし同時に僕の国際医療協力の活動は加速化していきました。イラン南東部大震災、パキスタン北部大震災、スリランカ津波被害、ジャワ島中部大震災、中国四川大震災への救援。また、常に戦闘状態のガザ地区での心理社会的ケア。東ティモール、バイロピテ診療所での日々の診療の仕事・・・。
 そしてその世界の出来事をこの日本に伝える「地球のステージ」公演もどんどん忙しくなっていきました。この日曜日についに2000回を越え、全国47都道府県はもちろんカナダ、アメリカ公演も成功していきました。
 それはきっと、上山病院の雰囲気がとても良く、まさに枯れ果てた砂漠の中に最高のオアシスを見つけた思いだったため、ようやく「自分が本当にやりたいこと」に対して素直になれたのだと思います。
 しかしそれが逆に「いつも病院にいない医師」という道になっていくとは、最初の頃は想像していませんでした。
 国際医療協力の分野では引っ張りだこになり57カ国を訪ねた時、「地球のステージ」が年間260公演を越えるようになった時、「もう上山病院のみんなに迷惑はかけられない」という思いが強くなってきました。それは、皆さんの善意と優しさによってただ「許されて」いるだけであり、僕はそれに甘え、依存することで世界に出ていき、日本各地で歌うことができていただけだからです。
 僕が不在の時は、病棟の皆さんが、外来の皆さんが、事務の皆さんが、そして医局医師たちがその代わりをやってくれていたから、ここまでやって来れたのです。
 正直そう思います。
 そして、心の中には「もうこれ以上甘えてはならない」という思いがふくらみ、ついに「開業する」決心をしたのです。それは開業医をやりたいのではなく、「まじめに国際医療協力をやりたい」と思ったからです。給与は激減&不安定化します。待遇も不全になります。でも、僕は国際医療協力を専門にする医師として、今後きちんとやっていきたい。そう思い「東北国際クリニック」を立ち上げました。
 二階にはNPO法人「地球のステージ」が引っ越してきて、ついに統合されます。これで国際医療協力と、地域医療を同時にこなす中心としてのセンターは完成します。
 今まで診てきた患者さんを連れてもいけない、未知の地仙台都市圏、名取市での開業です。食べていけないかも知れません。路頭に迷うかも知れません。でも、もうこれ以上甘えてはならないのです。いつまでも上山病院のみんなの善意に甘えてはいけない、それに対して誠実であるために、この開業は必要であったと思っています。
 辞めるにあたって、心の中にぽっかりと穴が空いたようになっています。
 でも、自分で決めた道なので進んでいかなければなりません。開業したくて辞めるわけではなく、「国際医療協力」をまじめにやりたくて開業するということがどんな道になるのか、これから試していきます。ただ救いは多くの仲間たちとこの仕事ができる喜びと、全国に応援してくれているたくさんの人々がいることでしょう。」
 さて、あしたから1ヶ月間は「地球のステージ」のみで生きて行くことになる。1ヶ月間「医師」は休業です。
 でも毎日子どもたちにステージで会うので、そういった感覚は保たれたままだと思います。
桑山紀彦

13年、退職」への5件のフィードバック

  1. 今まで
    お疲れ様でした!
    ヽ(^ω^)ノ
    1ヶ月間
    地球のステージ一筋
    全力で頑張って下さい★
    遠くから
    応援しています(^O^)☆

  2. 辞めるのではなく、始めるのですね。
    ただ…毎日を…Just for today! 
    今日で終わり…と思えば、怖いものなんかないですよ。
    「いつも教会にいない神父」といわれていそうな…神父より。

  3. 13年間、お疲れ様でした。
    私がステージを知って間もなくの頃、「上山病院」を一度見てみようと、家族で毎年行っていた、蔵王温泉でのスキー帰りに、ちょこっと寄ったのを覚えています。
    赤松の並木を通り、見えてきた「上山病院」。
    さすがに中には入れず、すぐ駐車場でUターンして帰りました。
    今から7年ほど前でしょうか。
    その後、桑山さんの案内で、中に入れてもらいましたが、木をふんだんに使った暖かな建物に、それまで持っていた精神科の病院のイメージとは、全く違って、明るさやぬくもりのようなものを感じました。
    これからは、「東北国際クリニック」が、桑山さんの目指すものの発信地となるわけですね。期待しています。

  4. 初めて書き込みさせていただきます。
    先日、仙台で「地球のステージ」を拝見し、一言では現せない感動がありました。
    先生が名取にいらっしゃるのを心よりお待ちしております♪
    どうぞ お身体ご大切に。

  5. 桑山さん
    本当に長い間お疲れ様でした。
    チーム北九州は応援団としてはまだまだ短いかかわりですが、桑山さんが何足ものわらじを履き続けておられることに時に感心し、時にはちょっと心配もしていました。上山から名取へと場所は変わっても、一層のミッションの広がりには勢いも力も加わるのだろうとみんな楽しみにしています。
    昨日、今日とせっかくの九州公演なのにチーム北九州から参加することができずとても残念ですが、これから秋から冬にかけては何度も公演を見る機会がありそうなのであちこちで桑山さんやスタッフの方々にお目にかかれるのを楽しみにしています。
    どうぞ一ヶ月の「ステージ専従」を充分に楽しまれますように。

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