ミャンマーの子どもたち~その3

ミャンマーのパダウン族に会いました。

 首長族として知られるこの民族はミャンマーの少数民族の一つで、なぜ首にリングを巻くかというと昔、虎に食われても死なないためとのこと。確かに虎は首をかみ切って獲物を仕留めます。なるほど、そんな環境で暮らしてきた知恵なのだと思いました。

 しかし実際に首が長くなっているかというとそうではなく、「肩が下がっている」のです。これは医者としてみて納得しました。一つ一つの頸椎が長く伸びるわけではなく、肩の付け根が下がっていくわけです。なるほどだから首が長くなったように見えるけれど、実は「肩の位置」に変化がありました。

 さて、そんな中で出逢ったのが真ん中のマウケさん、16歳とその向かって右横ムチャさん、18歳です。彼女たちのリングはまだ14~17本程度ですが、既にパウダン族としての風格があります。でもその一方でスマホをいじる若い女性でもありました。そんな2人に聞いてみました。

「将来の夢は?」

「・・・」

「何になりたいですか?」

「・・・」

一瞬、うちの通訳さんの言葉が通じていないのかと思ったけれど、そうではありませんでした。

通訳のスゥスゥさんが言いました。

「この子たちに将来の夢を聴いても意味がわからないのです。だって将来はこのまま家にいて、親の決めてきた人と結婚して子どもを産んで、その家族のために家事をしてやがて死んでいく。それが人生だと思っているんですから。」

 なるほど、それが彼女たちの人生であり役割なのだと思いますが、それでいいのだろうか、と思ってしまう。非常に伝統と格式の高い民族であるから、それが「あたりまえ」であるとずっと信じてきたのだと思う。だから彼女たちがそれで幸せだと思うならば、それもありなのではないか、と思います。でもその一方で、「自分の人生は自分が決める」ことを幸せと定義したら、この女性たちには課題があるのではないだろうかと思えてきます。いろんな人生があることを知った上で、自分は「この人生で行く」と選ぶのであればそれは納得だと思う。でも「それしかない」と思っていてそれを選ぶのでは「選択」になっていません。だからそこが「どうなのかな?」と思ってしまいます。

 それでもスゥスゥさんが言いました。

「首長族、パウダン族への支援は続いています。昨年初めてパウダン族から医学部に入った学生が出たんです。これは今までにはなかったこと。パウダン族は、ずっと医療を他の民族に依存してきたのですから。

 工学系の学生はもう既に大学の卒業生が出てきています。そうやって少数民族からも専門職の人間が出てくるようになりました。これは、とてもいいことだと思うのです。」

 その通りだと思う。自分の人生を決めていくための選択肢が増えていくことを「発展」と呼ぶならば、ミャンマーの少数民族の皆さんにも少しずつだけれど「発展」が訪れてきています。

 今こそ、自分の民族の中からいろんな専門職種の人を出して、発展していってほしいと思います。他の民族に頼らなくてもすむようにすることは、実は最も大切な「共存」を形づくる布石だと思う。

 ミャンマーの少数民族も今、変革の時を迎えています。

桑山紀彦

追記

 そんな中、ついにミャンマー中部のシャン州で、知的で先進的なパオ族の大学生に出逢いました。これは「地球のステージ」のこれからに大きな変革をもたらす人かもしれません。それはまた明日。

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