ミャンマーの子どもたち~その2

ミャンマーと聞くといろんなイメージを持たれるのではないでしょうか。
 太平洋戦争のインパール作戦や戦後の遺骨収集という問題はあの「ビルマの竪琴」で僧侶となった水島上等兵の物語に集約されています。僕も小説を読んだし、若き日の中井貴一の僧侶姿がとても印象的でした。
 また、難民をたくさん出している国として捉えている人も多いはず。年末のフィリピンで一緒に行動したジーナはUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のフィリピン事務所で働いていますが、ミャンマー難民の定住の仕事に就いています。
 そして今回の総選挙。アウン・サウン・スーチーさん率いるNLDが圧勝。民主化へ向かうことが期待されていますが、これほどの多民族国家をまとめていけるかという大きな課題が横たわっています。実際首都のヤンゴンでのスーチーさん人気は非常に高いですが、地方に行くとそれほどではなく、スーチーカレンダーも余り見かけることはありません。明らかな「温度差」があるのも事実です。それでも軍政権よりはずっといいはず。だからこれからミャンマーは良くなっていくと信じたいと思うのです。
 しかしこのバガンの遺跡群は美しさで群を抜いています。なぜ世界遺産にならないのか…。
 さて、そんなバガンの遺跡群の中で、一つだけ小高い丘がありドローン絶対禁止のこの国において視点の開ける丘はとても貴重です。その丘に至った時、3人の少女たちが囲んできました。観光地には良くある光景です。
 向かって右からトゥーラ・スイさん10歳、トゥー・ドゥエイさん8歳、イッ・ティティトゥさん10歳。この名前だけでもスター・ウォーズで異国の星に来た感じですが、すごいのはこの子たちの販売戦略です。
 ふつうは絵はがきをセットにしたものをぶらぶらさせながら、
「ぜんぶで3ドル、安いネー」
 で売ってくることが多いのですが、この子たちが持っていたのはなんと!「手書きの絵」でした。
 それを、
「ぜんぶで1000チャット(約100円)、安いネー」
 で売ってくるのです。実際に見てみるとまあまあな絵ですが、売り物になるかどうかは意見の分かれるところでしょう。
 一番活発なトゥー・ドゥエイさんに聞きました。
「誰が描いたの?」
「トゥーラのお兄ちゃん。」
「今どこにいるの?」
「学校。13歳で中学生だから。」
「なんで絵を売ろうと思ったの?」
「お兄ちゃんは絵がうまいんだ。だから絶対売れるって。」
「売れてきた?」
「まあまあ」
「これを売ったお金はどうするの?」
「お母さんにあげるよ」
「ほ~。自分で使うんじゃないんだ。」
「もちろんだよ。家はお金が少なくて大変なんだ。」
 う~ん、見あげたものです。
 絵が描けるお兄ちゃんがいる
 →絵はがきに似せて、それを売り物にする
 →「子ども力」を使って、それをアピール
 →絵が売れる
 →お金が入る
 →うちにお金を入れる
 →みんなが豊かになる
 →お兄ちゃんがまた絵を描く画材や紙が買える
 →また絵を売る
 技術と知恵と勇気で生き抜くこの子どもたちの想像力に勝算あり!です。
 ひとしきり騒いだあと、みんなの夢を聞いてみました。
「ねえ、みんなは将来何になりたいの?」
「私は、先生になりたい!」
とトゥーラさん。

(ドゥエイさん)
 
「私も先生になりたい!
とドゥエイさん。
「私は家で働いて、お父さんお母さんを楽にさせてあげたいな。」
とティティトゥさん。
 みんなちゃんと夢を持っています。特にそれまで「この絵を売らなきゃ」と必死の形相で大人の顔をしていたトゥーラさんが「先生になりたい!」といった時に見せた、はにかみながらも子どもらしい笑顔にほっとしました。
 結局6セット買ってしまい、6000チャット、日本円で600円を払ったわけですが、最高の売り上げの1日になったようです。
 帰り際、丘のふもとでお土産屋さんをしているトゥーラさんのお母さんに、
「いい子どもたちですね!」
と声をかけると、
「はい、自慢です!」
 と笑顔が返ってきました。経済的には苦しいけれど、家族みんなでできることをして頑張っている。この一家、そしてその友だちが光って見えました。
 こうしてミャンマーにも命があり、希望がある。それを支えるために大人たちが何をするのか。政治がそれをどう支えていくのか、目が離せない国になりました。
 
桑山紀彦

ミャンマーの子どもたち~その2」への2件のフィードバック

  1. 自分も楽ではない筈なのに「お母さんを楽にさせたい」と言ったいじらしさはどこからくるのでしょう?
    日本はなぜこんなにも不必要な豊かさが当たり前の国になってしまったのでしょう?
    豊かさを維持するために水中の足掻きを止められない輸出立国って何か狂っていますね。

  2. 子供たちの発想力、また、家を助けるための気持ちと行動力は凄いと思いますが・・・。
    良い意味での民主化が進み、人々の生活にも潤いをもたらし、
    子供たちが物売りをしなくてもよい環境に早くなって欲しいと思います。

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