柿の木実る秋の岐阜

山県と書いて、やまがたと読む街が岐阜にはあります。

 そこに山県高校があり、今日はその高校でのステージでした。盟友翠(みす)先生が校長先生をされていることで、今日はこの地に降り立ったのですが、純粋な高校生のみんなに囲まれ、静かに時間が過ぎていきました。それぞれの高校に、それぞれの課題があります。「地球のステージ」は各校の持つ課題を事前になるべく把握しながら臨みます。今日もいろんなことを思いながらステージを続けましたが、やはり岐阜の子どもたちは基本とても純粋であると思いました。だからこそ、これから大きな世界に出て行くにあたって、少しでも広い世界のことを感じてもらえるといいと感じながらステージを続けていきました。
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 周りは、たわわに実った柿の木にあふれ、まさに秋のさわやかな1日が始まっていきました。

 午後からは、まるで母校のように思っている大垣北高等学校でした。
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 今年で8年目。ステージ1~6を1巡して今年は2巡目、2番の演目です。総数は1000人に近く、しかも保護者の皆さんも40人以上事前申し込みがあって、体育館はめいっぱい入っていらっしゃるという感じでした。

 そして恐ろしいほどの静寂のなか、ステージが始まっていきました。

 もう旧知の仲となった山田先生はじめ、多くの先生方に歓迎されていることを肌で感じ、いよいよ1曲目が始まったのですが、ここでいつもの弱点が出てしまいました。

 「期待されている」

 と感じすぎると、緊張が度を超して力が入りすぎて、音程を外す現象が出てしまったのです。毎年公演となっている大垣北だからこそ「しっかりやらなきゃ!」という思いが強すぎて、失敗するんですね。自分にはこういう弱い点が実はあるのです。

 1曲目の「祈り」の2番で2回目の音程を外した時、嫌~な気持ちになり、このままどんどん失敗するのではないか、という不安に駆られました。そんな時は、

「みんなは自分のことをどう思っているのだろう。」

「なんて歌が下手なんだ、って思っているかも。」

「こんなんで良く公演やっているよな、って思っているんじゃないか。」

 と自意識過剰のスパイラル(悪循環)にはまっていきそうでした。

 でもかすかに見える一番前の3年生の男子が、それでも固唾をのんで見守ってくれている姿が横目で見えて、

「よし、ちゃんと笑わないで聴いていてくれている。」

 と思えた瞬間、気持ちの中に変化が起きました。

「自分は歌が好きだった。歌うのが何よりも好きなんだ。だから気負わなくてもいい。”歌が好きなんだ”って気持ちで歌えばいいのだ。」

 という「歌う原点」に還ることが出来たのです。すると、ふしぎなもので気持ちが楽になり、喉も安定して、3番は安定して歌うことが出来ました。

 たった5分の中で起きる心の苦悩と巻き返し。高校のステージは特に緊張します。それでも本来の自分に立ち返ることが出来ればこうして納得のいく歌になる。

 公演3500回目を目前に控えていても、まだまだ発展途上にあります。

 そして交流会。
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 北高校は超進学校です。だからこそ悩みもまた深い。ついつい人と比べて落ち込む自分。やらなきゃいけないことは見えているけれど、なかなかそこに力を向けられない自分へのふがいなさ。いろんなことが正直に語られていきました。

 それはとても不思議な空間でした。

 でも、こうして本音で語り合える時間が持てたこと。みんなで涙しながらも、「自分らしく生きよう」という答えに近づいていけたことを誇りに思いながら、北高校を後にしました。

 誰も完璧ではない。だからこそ、より良くなる自分を目指すのだ。そう確信しながら、2つの高校の公演を終えました。実に1週間ぶりに名取に帰りました。ステージ衣装もずっと換えていないので、そろそろ臭いが…。

 やはり、学校は「いきもの」です。これからもライブであることをメリットに、いろんな学校と関わっていきたいと思いました。

 山県高校もその課題と、「地球のステージ」の存在が会わないこともあるかも知れません。であるならば、来年はもっとその山県高校のニーズに合わせた形で公演することも出来るはず。1回やって見えてきたことを是非来年に活かし、その高校の課題に沿って内容をどんどん変えていくことも大切ではないか、と思いました。

 私たちは生のライブであるが故に、そんなモディファイ(修飾)を行いながら「共に取り組む」と言うことを目指していきたいと思います。

 校長先生、だからこそまた来年やりましょう!

桑山紀彦

柿の木実る秋の岐阜」への3件のフィードバック

  1. 心療内科医の桑山さまでもそんなに緊張するのですか?意外でした。
    「誰も完璧ではない。だからこそ、より良くなる自分を目指すのだ。」
    桑山さまらしい前向きな姿勢は好感が持てます。

  2. 正しく見る、正しく思う、正しく語る…
    親しい方に、お釈迦様の八正道を教えていただいたことがありましたが、本当に大切なことだと感じます。
    なかなかできません…
    桑山さんが率直に伝えてくださる心の動きに、私もたくさん揺れ動きます。
    『誰にどう思われているか』にとらわれたとき、どうもいけません。
    今も、自分の思いを大切に!夢中になりたい!と思います。

  3. 人間だからプロでも失敗はあります。
    しかし、イージーミスでないミスは失敗ではありません。
    一所懸命から出る失敗は一所懸命見ている人は流れを理解しているから
    失敗とは映らない筈です。
    ゆとりをもってやりましょう。

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