小さき出演者たち
映画「ふしぎな石」のガザ版制作にあたって、今回の大発表会の内容を検討してみました。
まず演技力があること、そして伝えたい何かを持っていること、そして家族の理解があること。注目してきたのが、ファラッハです。
現在10歳になったファラッハは、幼い頃にお母さんと弟を失っています。お母さん、ファラッハ、弟の順に並んで食事をしていたところをミサイル攻撃によって吹き飛ばされ、間にいたファラッハだけが助かったのでした。
壮絶な経験をしているファラッハですが、今回の120人のチームの中ではとても10歳とは思えないような前向きな発言と強い意志の力を表現してきました。でも時折見せる哀しげな表情。それが何なのか、なかなかまだ見えてはいません。
そんなファラッハを主人公に、幼くして別れたお母さんへの想いをきちんと形にすることがファラッハにとって向き合うことになるのではないか、と考えました。今も多くの兄弟姉妹に囲まれて育っているファラッハですが、お母さんへの想いはなかなか表現できなくてしまい込んでいる可能性があります。そんなお母さんへの想いを形にすること。大変意味のあることに思います。
ファラッハに、
「映画に出てみない?」
と聞くと、
「出たい~!」
と二つ返事でした。そこで、ファラッハにとって一緒に演じたい3人の友だちを決めてもらうことにしました。この年代の子どもたちは友だちが大切。仲のいい友だちと一緒だと、困難も乗り切れることが多いと思います。
「ヤキーンと、イスラーム。そしてナガムがいいな。」
「わかった!」
早速夕方ファラッハの家にみんなが集まりました。
映画の撮影は7月27日から8月2日までの7日間、ぶっ通しで行われること。炎天下、ほとんどが外のロケになること。シナリオは6月までにはそろえて渡せるので、事前にちゃんと読んでおけること。外のロケになるけれど、ハマスの人たちに何か言われないように、ちゃんと許可を取ってすすめることを伝えました。
そして内容はファラッハが主人公であり、彼女の夢に出てきたお母さんからの暗示を解きながら5つの石のかけらを集めて回る冒険活劇であること。その途中で4人の大人たちと出逢い、空爆や占領の中でどんな思いで生きているのかが語られること。最後には海の見える丘に立ち、夕陽の中で光る石から天に昇ったファラッハのお母さんの声が聞こえてくることを伝えました。
ファラッハに、
「今はいないお母さんのことをがテーマになるけど、辛くない?」
「大丈夫だよ。」
お父さんに聞くと、
「ちゃんとシナリオを読ませてもらいたいけれど大丈夫だと思う。」
とのことでした。シナリオは夜、ファラッハが寝ていて、夢の中にお母さんの声が聞こえてくるところから始まります。
この4人の小さき出演者たち。ファラッハとナガムは10歳、ヤキーンとイスラームは11歳です。でもそれぞれに夢があります。ナガムは家の内装を手がけるデザイナー、ヤキーンは英語の先生、イスラームは小児科の医師、そしてファラッハはお金がなくても誰でも見てあげられる医師、でも歯医者もいいなあ、と思っているとのこと。そしてみんな一様に、その仕事と共に「俳優になりたい」と言います。
この映画にちゃんと期待してくれています。
(桑山から向かって左方向に、ファラッハ、イスラーム、ナガム、ヤキーン、そしてうちのスタッフ、アーベッド)
さて、クランクインは7月27日。クレーンも持ち込んでの撮影は灼熱地獄で体力勝負かも知れませんが、いい感じで制作していきたいと思います。
請うご期待!
桑山紀彦
心のケアの活動が広く浸透している様子が覗えました。
子供たちの感性は万国共通で素晴らしく、その純粋さを大切にしたいですね。
日本版ふしぎな石との共通点、特徴がどう表現されるか、作品が待ち遠しい思いです。
それにしても電力不足で寒さが厳しそうですが、現地の人々の明るい顔には驚きました。
とても、強い心を持っていると思いました。
私も正直そのようなことがあったら
乗り越えられるか分かりません。
夢に向かって頑張ってください!
撮影とても大変そうですが頑張ってください。