また海に

今日、久しぶりに閖上の海に出ました。
 これで3度目。一度目は津波を受けた翌年の7月15日。始めて太さんの船が復活して出かけました。
 二度目は昨年の3月11日、閖上中学校のご遺族の皆さんと海に手紙を流しに出かけました。
 そして今日は三度目。今とても深く関わっている閖上の青年の心の復活のために、出かけました。
 今日の閖上の海は穏やかで、天気も最高。とてもいい感じでした。
 しかし、外海に出たその瞬間。わずかなうねりが出ていました。その瞬間の恐怖と心の中のざわざわ。これが海に対して感じる恐怖だと思いました。
 そして「正体」をみたのです。
 そう、自分たちを殺そうとした者の正体。
 人は、「死ぬかもしれない」と感じる体験は滅多にしません。一生に1回もないなかで人生を送っていく人がほとんどです。しかし、今回の津波では多くの人が死の恐怖を感じてしまいました。それが心的外傷、トラウマになっているのです。
 そんな経験をしてしまった時、人は普通そのことを考えないようにして心の中に閉じ込めます。そしてその心のフタを開けようとせず過ごしてしまいます。すると、それがPTSD(心的外傷後ストレス障がい)となっていきます。
 今日の海は、まさに「自分を殺そうとした存在」でした。しかし、今日の海は穏やかで美しく、全く敵意もなく、殺意もなくそこにありました。
 ちゃんと接すると、自分に殺意を向けた存在が今はそこにないことに気づいていきました。
 そして実はこれまで避けてきたが故に、その「正体」がどんどん肥大化して恐ろしいものに、自分自身が創り出していたことに気づいていくのです。
 それがトラウマに向き合い、PTSDから脱却していく大きな力になります。
 閖上の青年の勇気と、その言葉に未来を感じる出来事でした。
桑山紀彦

また海に」への2件のフィードバック

  1. 小さなことでも、もやもやとしている自分の心、納得できないことへの憤りなど、フタをして奥にため込まないことは大切だと、私自身感じています。
    相手があることなら、語り合います。今日もそう強く感じたできごとがありましたので…メッセージをありがとうございます。
    優しく穏やかな海と向き合えてよかったですね。
    すみません、うまく言い表せませんが…
    来年の20周年記念行事に参加したいです!!

  2. 普段私たちが接する海は災害とか遭難とか水難事故とか、ニュースで知ることが多く、「広く・深く・飲み込まれる」と言った怖いイメージの方が大きいですね。
    しかし、海は自ら牙を剥くことはないことを知っている人には怖く感じないでしょう。太さんはきっとそう思っているはずです。
    優しい海と向き合ってトラウマを乗り越えてほしいです。

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