ジョエル、再会

3年ぶりで、マサイ族のジョエルを訪ねました。
 「地球のステージ3」で登場する彼は、破壊されていくケニアの自然環境の中でも、自分のマサイ族の村を自立に導くため、実に数多くのプランを実践し、見事に村々を平和に導いていました。
 そのあまりに先駆的な試みに感激した僕は、結局4年前、3年前とずっと彼の村に通い、いろんなことを教えてもらってきていたのです。
 彼は「村長の息子」として「村の自立」「村々の共存」を真剣に考えていたのです。
 そして2008年、彼は「村長の息子」から「村長」になっていました。
 そころがこの7ヶ月続いた大干ばつで、ジョエルの村は牛を800頭失い、現在はたった9頭になっていました。
 「ギリギリのところで生きているよ」
 ちょっと老けてヒゲを生やしたジョエルは言いました。
ジョエル
ジョエル
 「とにかくぜんぜん雨が降らなかった。普通乾期は雨が降らないものだが、この7ヶ月は一滴も降らなくて牛がバタバタと死んでいった。おまけに昨年11月からのケニアの政治的不安定さで観光客は激減したんだ。それで現金収入も激減したよ。一時はこの住み慣れた村をどこかに移動しようとも考えたけど、どこも状況は同じだった。草木は枯れ果て、家畜を生かす環境ではなかったんだ。」
 それでも、どうやって生き延びてきたのか、と問うと、
 「助け合ってきたよ。おかげでうちの村のように観光客を入れて現金収入を得ようとする村があのあと2つできた。そことの連携を強めて、お互い助け合ってきた。それから、売れる産品を増やし、市場開拓のために離れた街までいくようにもした。子どもが増えると貧困度数が上がるから、この危機を切り抜けるまで、普通は5,6人子どもを持つものだが、家族にお願いして2,3人でとどめておいてもらっている。
 あとは「サファリ・コム」という携帯電話&インターネット会社と連携して「マサイ族とメールのやり取りをしよう!」というキャンペーンに乗って、「ジョエルのアカウント」に質問をくれた人へ、僕が返事を書くと、定額でお金が入ってくるという作戦にも出ている。とにかくやれることは何でもやってしのいできた。
 そして先週からようやく恵みの雨がきた。見てくれ、ちょっと緑っぽくなってきただろう?」
 すごい男だ。インターネット環境は10キロ離れた教会に設置してもらっているそうです。
 おそるべしジョエル。
 最後に言われました。
 「よくも忘れないで何度も来てくれるなあ。普通の客は一回来たらもう来ないよ。あと一体何回来るつもりだい?」
 そう言って笑ったジョエルには、確かに「村長の威厳」がありました。
 確実に雨が降らなくて、そして政治が不安定でジョエルたちは困窮しています。しかしできることをやって、何とか生き延びている彼らの村は昔と同様、電気、ガス、水道もマッチもなく、基本的な自給自足を貫いています。
 「子どもたちへの教育はかかさないよ。校舎はずいぶん壊れたけどね。大きめのドナー(提供者)を見つけるように、今ネットで交渉中だ」
 そう言うジョエルの履物は古いタイヤを改造して創った「自作」の草履でした。
 ジョエル、あなたの生き方を誇りに思います。

ジョエル、再会」への3件のフィードバック

  1. ジョエルが村長さんになったと聞いて嬉しかったです。でもその分多くの苦労と責任を背負って生きているんだなと思うと、一回り大きくなったジョエルの姿に思わず、「頑張って!」と声をかけてしまいました。
    牛が800頭もなくなってしまうなんて、想像もつきません。今はたったの9頭。どうやって生きていっているんだろうと切なくなります。
     2007年末の大統領選の結果治安が悪化し、渡航自粛などで訪れる外国人も減ってしまったことが、マサイ族の村にも影響してるんですね。
    でも、村同士助け合っていると聞いて、その絆に感動しました。
    だって、今まで資源が少なくなったり、生活が厳しくなると争いに発展する状況を数多く見てきたので。
    自分たちのできることは工夫と智恵で乗り切る、自制する心を育てるなど気持ちを律して生きている姿を見習わないといけないな、と強く思いました。
     少し雨が降ってきたと聞いて安心しました。大地の恵みとなってほしい、ジョエルの心も潤してくれるといいなあ、と日本から願っています。

  2. 大統領選挙の混乱がようやくおさまったとはいえ、まだまだ不安定な状況にあるケニアですね。
    一瞬で壊されたものを、これから途方も無く長い時をかけて少しずつこつこつと復興していくのでしょうね。
    壊されても傷つけられても諦めないで頑張るケニアの人たちって素晴らしいですね。
    その代表がジョエル村長!
    逆らうことができない自然現象や政治に対しても、助け合って、諦めずに、知恵を使って、最新技術も習得して、でも信念は貫いて、未来に希望を持って生きる姿は、便利な暮らしを享受する私たち日本人が忘れてしまった生きる姿かもしれません。
    ジョエル村長が出演するだろう今後のステージで、多くの人が生きるヒントを発見できると思うとわくわくします。

  3. ジョエル村長の言葉に、感動して目が潤みます。
    どんなに苦しい状況になっても諦めず、また恨み言も言わず、自分にできる事を考えて、一生懸命に取り組んでいる。その精神力を見習わなければ・・・と思いました。
    それが、村長の威厳でしょうか。
    他の村とも連携して・・・助け合いの精神は今の日本で、とても必要なものだと思います。

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