ガザ現場報告~宗貞No.2「粘土細工プログラム~Clay Model~」

占領が続くガザ地区に暮らす子どもたちの心のケア(Psychosocial Care Program)は、ガザ地区ラファ市の国境付近にある2校から全120名の子どもたち(小中学生)が参加しており、ファシリテーターたちと毎日充実したワークショップが展開されています。4月2週目からいよいよ三次元表現プログラム。粘土で立体造形物を作り表現する「粘土細工(Clay Model)」プログラムに取り組んでいます。
 
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問いかけ中
ファシリテーターも研修で得たイメージを活かして実践へ
 
カラーこむぎ粘土のやわらかい触感や両手で“練る”“こねる”動きは気持ちが良いので、子どもたちや大人も自然ないい表情で取り組んでいます。だから粘土細工もだんだん凝ってきちゃうんですよね。
でも、単に上手な粘土作品を作るのが目的ではなく、まずはテーマに合ったものを粘土で作りながら、そこへ自分の出来事や物語、感情をくっつけて表現していこうというもの。好きな物や大切なものは大きかったり丁寧に作っていたり、逆に嫌悪や辛い想いも一人ひとり立体造形や言葉にして吐き出されます。
また、“平面(二次元)を立体(三次元)に起こす”ということは、大人には容易でも特に低学年の子どもたちには難しい概念です。それを知ることも大切で、まさに起き上がりを知るその瞬間は衝撃です。グワッと空間(奥行き)が立ち上がり、立体の世界が想像力を刺激しながら広がっていきます。この感触を是非ともつかんで欲しい!
 
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見よ、小さな手で細部も作り出す芸術家の真剣なまなざしを!
 
第2回目のテーマは「失ったもの」でした。
飼っていた猫が死んで失ってしまった。お父さんとお母さんが離婚してお母さんを失った。一番上のお姉ちゃんが赤ちゃんを産むときに死んでしまった。大好きなサッカーができる場所も奪われたから自由を失った。何ヶ月も前から旅行に行く準備をしていたのに、イスラエルに止められてその機会を失った。親戚のおじさんがイスラエルに捕まっているから、逢うことも話すことも出来ない。エジプトに行けなくなったから国境を挟んで家族に逢えない。おじいちゃんが殺されて揃って家族団らんする時間も失った・・・肉親や近親者、動物など命ある者との死別、暮らしや環境、自由や機会などの喪失。本当に子どもたちは自由にいろいろな粘土細工を作り出して、時に涙しながらも出来事や気持ちも表現してくれました。
 
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粘土細工たち
 
活動開始時には、見事に友だちと横並びの右習え的な表現ばかりが目立っていたというのですが、同じ子どもが作ったのかと感じるほど、十人十色の等身大の想いが形になってきています。表現力も鍛えられていい感じです。
みんな自分の心と向き合ってよくがんばったね。
 
ガザ地区・ラファ事務所 宗貞 研

ガザ現場報告~宗貞No.2「粘土細工プログラム~Clay Model~」」への2件のフィードバック

  1. 「失ったもの」を見るとやはり暗澹としますね。
    小さな悲しみと大きな悲しみが当たり前のごとく混在していて、ささやかなゆとりの時間を圧迫して影をおとしている。
    やはりこれが紛争地の日常なのでしょうね?
    ぬるま湯日本の日常に大きな落差と焦燥感を感じます。

  2. なるほど~!「失ったもの」ですか。
    嫌悪や辛い気持ちなども造形物にして形や言葉で吐き出していくのですね。
    自分の気持ちに向き合い、手を通して形に現れるプロセスがじっくりと気持ちに寄り添い昇華されていくプロセスになること想像して、子どもたちのこれからを未来を日本から応援しています。

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